2010-07-11 Sun

『氷菓』
米澤穂信
角川文庫
2001年10月
★★★
<あらすじ>
省エネをモットーに生きる高校生、折木奉太郎は、高校入学に際し、海外旅行中の姉から手紙を受け取った。その内容は、高校時代の姉がかつて所属していた古典部に入れ、というものだった。今年新入部員が入らないと古典部は廃部になるそうだ。
奉太郎は面倒に感じながらも入部した。誰もいないはずの部室に向かうと、そこには先客つまり入部希望者「千反田(ちたんだ)える」がいた。この好奇心旺盛なお嬢さまには、古典部に縁のある叔父がいた。えるは、当時叔父が関わったある事件について語り始めた――

関連するタグ sing 【小説】 【推理/ミステリ】 米澤穂信 【文芸書】
2010-06-05 Sat
誰も生き返りはしないのに、あなたには生き返って見える、騙し絵の不思議。

『ラッシュライフ』
伊坂幸太郎著,新潮文庫,2005年4月
★★★★
** あらすじ **
画家の志奈子は、強欲なる画商・戸田と新幹線で移動する。
プロの泥棒・黒澤は、ターゲットの家の下見を綿密に進める中で、同級生・佐々岡と再開する。
新興宗教の教祖に惹かれる河原崎は、幹部・塚本に崇拝する「神」を殺そうと持ちかけられる。
精神科医の京子は愛人であるサッカー選手の青山と、互いの結婚相手と別れることを共謀するが、その最中に人を轢き殺してしまう。
リストラされ家族も失った豊田は、野良犬とともに街を歩く。
街ではバラバラ殺人が起こり、動く死体のウワサが起こる。
そして彼らの「特別な1日」が始まる。
『シャッターアイランド』『騙し絵』とトリック作品のレビューが続いてますが、騙し絵と言えば思い浮かぶのが本作。『オーデュボンの祈り』、『魔王』に続いて、伊坂幸太郎作品のレビューです。
「ある1日」をまったく無関係の主人公たちが過ごすなかで、彼らはいくつかの出来事に遭遇し、しかし彼らにとってそれは「出来事」でしかないのかもしれません。
そんな彼らにとって見れば何気ない日々を、伊坂幸太郎は騙し絵のように映すことで、僕たちに「事件」を起こしてくれています。(まあ人が死んでる時点で「何気ない」は言い過ぎかもですが・・・)
街に流れる不穏なうわさの真相を知ることができるのは、彼らの世界を俯瞰する読者だけ。
読み終えたとき全てが1本の線で繋がる爽快な一冊! あなたにはそのロジックを見破れますか?
!このレビューはネタバレを含みます!

関連するタグ Otoya 【小説】 【文芸書】 【推理/ミステリ】 伊坂幸太郎
2010-05-31 Mon

マルセル・F・ラントーム
訳 平岡敦
東京創元社 創元推理文庫
2009年10月
★★★★
東京創元社ウェブマガジン Webミステリーズ!
<あらすじ>
世界最大のダイヤモンド「ケープタウンの星」が展示されるプイヤンジュ邸の小部屋は、窓が塞がれ、入口が一つきり。
さらに、各国から集められた互いに顔も知らなければ言語も通じない六人の警官が、部屋の中央のケースにダイヤモンドを入れたときから常に見張っていた。
もちろんこの時ダイヤモンドは本物。
ところが数時間後、展示終了後にケースの鍵を開けて取り出してみると、ダイヤモンドは偽物にすり替えられていた。
一体、いつ、誰が、どうやってすり替えたのか?

関連するタグ sing 【小説】 【推理/ミステリ】 マルセル・F・ラントーム 【文芸書】
2010-02-26 Fri
1936年2月26日、午前4時21分。処刑されたはずの安藤輝三は、第三連隊を率いて三宅坂を行く。
国連の協力を得て、2度目の鈴木貫太郎侍従長襲撃を完遂するのだ。
懐の”ピリオド”には、残された正規残存時間がデジタル表示されている。
”327:50:39”

『ねじの回転』 (上・下)
恩田陸著,集英社,2002年12月
★★★★
鈴木貫太郎。
江戸時代の最後の年に生まれ、日露戦争では水雷戦にて”鬼カンタロー”の異名をとる活躍をし、2・26事件にて襲撃され頭部を撃たれるものの、蘇り、太平洋戦争末期には首相となって終戦を果たします。
物語は、主人公の1人である安藤輝三が2月26日に鈴木貫太郎を襲撃するところから始まります。しかしながらこれは初めての襲撃ではありませんでした。
すでに処刑されたはずの安藤は、21世紀の国連により蘇生され(というか時間を巻き戻され)、再度「史実を再現すること」を求められるのです。少しでも「史実」と異なる結果となれば、「不一致」として時間を巻き戻されやり直し。さらに、未来人に同じ任務を任された人間が他にも2人。
そして暗躍をはじめる「4人目」。
選ばれた介入ポイント「昭和維新」を舞台に、恩田陸が描く本格SFミステリです。

関連するタグ Otoya 【小説】 【推理/ミステリ】 【時代小説】 【SF】 恩田陸 【文芸書】
2010-01-12 Tue
この島には最初から欠けているものがある。そしてカカシは自殺した・・・。

『オーデュボンの祈り』
伊坂幸太郎著,新潮文庫,2003年11月
★★★★
新潮ミステリ倶楽部賞
コンビニ強盗で捕まった伊藤は、気がつくと見知らぬ島にたどり着いていた。
その島「荻島」は、江戸時代以来外界から鎖国を続ける島だった。島には、嘘しか言わない画家や、島の法律として殺人を許された男、そして未来の見えるしゃべるカカシ「優牛」がいた。
伊藤が島に着いた翌日、カカシはバラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいるのを発見される。
「未来がわかるカカシがなぜ自分の死を阻止できなかったのか?」と伊藤。
「この島には、大切なものが最初から欠けている」という謎の言い伝え……
伊坂幸太郎のデビュー作『オーデュボンの祈り』です。
理系小説家ならではのパズルを解くような幾何学的ストーリーの中に、伊坂幸太郎ならではの緩やか旋律が響きます。

関連するタグ Otoya 【小説】 【推理/ミステリ】 伊坂幸太郎 【文芸書】
2009-10-31 Sat
「この死はやつに絶望をもたらすだろう、そしてまだ千もの不幸がやつを苦しめ、滅ぼすのだ」

あるいは現代のプロメテウス』
英題
『Frankenstein: or The Modern Prometheus』
メアリー・シェリー 1831年
森下弓子 訳 1984年
創元推理文庫
★★★★
<あらすじ>
11月の雨もわびしい夜、消えかかる蝋燭の薄明かりの下でそれは誕生した。
解剖室などから各器官を寄せ集め、継ぎ接ぎされた身体、
血管や筋の一つ一つが透けて見える黄色い皮膚、そして茶色く潤んだ目。
若き天才科学者フランケンシュタインが、生命の真理を究めて作り上げたもの。
無生物に生を与える実験の、あまりに醜悪な結果に、彼はこの生き物を見捨てて
逃げ去るのだが…。(本書より)

関連するタグ sing 【小説】 【推理/ミステリ】 【ホラー】 メアリー・シェリー 【文芸書】
2009-06-11 Thu
あなたは気付いていますか?昨日と違う今日に。そして今日と違う明日に。

『魔王』
伊坂幸太郎,講談社,2005年10月
★★★
久しぶりに読む伊坂幸太郎作品。ここで紹介するのは初ですね。
モーニングに連載していた『モダンタイムス』という小説があるのですが、まだ伊坂幸太郎を知らなかったころ(たぶん2年前くらい)、連載中の1話だけを読んで激しくのめりこんだ覚えがあります。
途中部分をちょっとだけ読んで、あれだけ続きが気になるというのは、本当に一文一文が無駄なく書かれているということなのでしょう。
『モダンタイムス』は2008年10月下旬に刊行されました。
これは今回紹介する『魔王』の50年後を書いた作品となっています。
ということで、まずは『魔王』から読んで見ることにしました。

関連するタグ Otoya 【小説】 【推理/ミステリ】 【政治/社会】 伊坂幸太郎 【文芸書】
2009-01-17 Sat
完全な毒薬の使い途は……
『名探偵に薔薇を』
- a Rose for the Detective -
城平京
1998年7月
創元推理文庫
第八回鮎川哲也賞最終候補作
★★★★★
amazon
あらすじ
ある日、警察・マスコミ各社に、不可解な童話「メルヘン小人地獄」」が届けられる。内容は、小人を材料とする完全な毒薬を作った悪い博士への報復に、ハンナ、ニコラス、フローラの3人が小人たちに殺される、というもの。
この毒薬の名は「小人地獄」。、無味無臭かつ、成分、製法、作用プロセスなど詳細は一切不明ながら、適切な致死量のみわかっていることから、完全犯罪を成立させることができる完璧な毒薬と言われる。
童話が送られてから数日後、1件の殺人事件が発生。その現場には、無数の小人の足跡、そして血で書かれた「ハンナはつるそう」の文字。
これらはすべて「メルヘン小人地獄」」の内容そっくりであった。
名探偵「瀬川みゆき」は事件解決に挑む、それが更なる事件を呼ぶことに繋がるのであった――
(以下、ネタバレあり)

関連するタグ sing 【小説】 【推理/ミステリ】 城平京 ★★★★★ 【文芸書】