2009-07-30 Thu
幕軍は、老中格松平正質を総督として、諸隊を部署した。兵数からみれば、幕軍のがわが、圧倒的に優勢である。
「この戦さは勝つ」
と歳三は信じた。
新撰組、それもしぼってみれば、江戸から京都にかけて苦楽を共にした二十人内外が、
おそらく奮迅のはたらきをするであろう。
歳三は、ふしぎと心がおどった。
多摩川べりで県下に明け暮れていた少年の歳三が、いま歴史的な大喧嘩をやろうとしている。
その興奮かもしれない。
やがて暮も押しつまり、年が明けた。
明治元年。

『燃えよ剣』
司馬遼太郎著,新潮文庫,1972年6月
★★★★
「乱世」特集いよいよの最終弾は、幕末の京を血飛沫で染め上げた壬生狼・新撰組の
“鬼の副長”、土方歳三を描いた『燃えよ剣』です。
(乱世特集はこちらからどうぞ)
幕末を彩る新撰組。
思想戦の様相を呈し、時勢が二転三転してややこしい幕末ですが、
新撰組はそんな「幕末」という乱世を象徴する存在といっていいのではないでしょうか。
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2009-07-13 Mon
織部正の陰謀は、すでに善十を竹内峠からよんだときから、周到にすすめられていたのであろう。織部正は、自分の人生を自分の手で割り砕いた。
が、みごとに補綴した。
(第三編『割って、城を』より)

『人斬り以蔵』
司馬遼太郎著,新潮文庫,1969年12月
★★★★
<目次>
・ 鬼謀の人
・ 人斬り以蔵
・ 割って、城を
・ おお、大砲
・ 言い触らし団右衛門
・ 大夫殿坂
・ 美濃浪人
・ 売ろう物語
「乱世」特集第6弾は司馬遼太郎の短編集『人斬り以蔵』。
と言っても今回は『人斬り以蔵』ではなく、本書に掲載された別の2編をご紹介したいと思います。
(乱世特集はこちらからどうぞ)

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2009-06-20 Sat
日本史は、彼をもって初めて英雄というものを手に入れた。
『義経』(上・下)
司馬遼太郎著,文春文庫,
★★★★
「乱世」特集第2弾は『義経』です!
(特集第1弾はこちらからどうぞ)
源義経と言えば、いわずと知れた源平合戦の麒麟児。
武蔵坊弁慶などを従え平家を追い詰めますが、最後は兄・頼朝に殺されます。
本書は義経の誕生から最期までを描く司馬遼太郎の傑作。
前回紹介した『定家明月記私抄』でこの平安末期~鎌倉初期に興味を持ったので、今回は歴史の主人公の視点からこの時代を読んでみました。

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2009-05-05 Tue

『島津奔る』上・下
池宮彰一郎
新潮社
2008年02月
第12回柴田錬三郎賞
★★★
amazon
豊臣秀吉の死をきっかけに石田三成と徳川家康の抗争を経て勃発した天下分け目の大決戦、関ケ原の戦い。
この戦いでは、東軍西軍それぞれ約8万人の軍勢が大激突しました。
そんな中、わずか1500人という寡兵ながら、他の軍隊が全く手出しできず、敵主将家康軍の真横を通り抜けて退却、しかも負けた西軍(三成)に就いていたにもかかわらず戦後に本領安堵(お家存続)という驚くべき功績を残した大名がいたことをご存知でしょうか。

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2009-03-08 Sun
メディチ家、ダ・ヴィンチ、マキャヴェッリ――。時代はルネッサンス。
ローマ法王となった父・アレッサンドロⅥ世の教会勢力を最大限に利用し、フランス王の援助も受けて、イタリア諸国とそして弟妹までをも操る非情の戦略家、チェーザレ・ボルジア。
本書は塩野七生が最初の長編として綴った、カエサルと同じ名前を持つ男の物語です。
『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』
塩野七生著,新潮文庫,1982年9月(単行本は1970年3月)
★★★
![]() | チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (1982/09) 塩野 七生 1970年度毎日出版文化賞受賞 商品詳細を見る |
チェーザレ・ボルジア(Cesare Borgia)は、若くして枢機卿の座に昇りながらも、聖職者としての地位を捨て、権謀術数を駆使してイタリア統一を試みた人物です。
強力な後ろ盾を駆使することはもとより、政治的な手腕に長け、瞬く間にその勢力を広げます。
本書前半はこのチェーザレの快進撃が綴られており、あらゆる手段で政敵を葬るその姿に胸がすく思いです。
一方で、チェーザレは妹との近親相姦や、兄弟すらも含めた政敵・部下の暗殺・処刑により悪名が高く、彼の死後も『毒薬使いのボルジア』として名が残ります。

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