2009-07-30 Thu
幕軍は、老中格松平正質を総督として、諸隊を部署した。兵数からみれば、幕軍のがわが、圧倒的に優勢である。
「この戦さは勝つ」
と歳三は信じた。
新撰組、それもしぼってみれば、江戸から京都にかけて苦楽を共にした二十人内外が、
おそらく奮迅のはたらきをするであろう。
歳三は、ふしぎと心がおどった。
多摩川べりで県下に明け暮れていた少年の歳三が、いま歴史的な大喧嘩をやろうとしている。
その興奮かもしれない。
やがて暮も押しつまり、年が明けた。
明治元年。

『燃えよ剣』
司馬遼太郎著,新潮文庫,1972年6月
★★★★
「乱世」特集いよいよの最終弾は、幕末の京を血飛沫で染め上げた壬生狼・新撰組の
“鬼の副長”、土方歳三を描いた『燃えよ剣』です。
(乱世特集はこちらからどうぞ)
幕末を彩る新撰組。
思想戦の様相を呈し、時勢が二転三転してややこしい幕末ですが、
新撰組はそんな「幕末」という乱世を象徴する存在といっていいのではないでしょうか。
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