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ラ・フォル・ジュルネ
【思考法】 『イノベーションの達人!』
イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材 『イノベーションの達人!
  -発想する会社を作る10の人材ー


  トム・ケリー著,早川書房,2006年
  ★★★★

  <10人の人材>
  ①人類学者
  ②実験者
  ③花粉の運び手
  ④ハードル選手
  ⑤コラボレーター
  ⑥監督
  ⑦経験デザイナー
  ⑧舞台装置家
  ⑨介護人
  ⑩語り部


「デザイン思考」という言葉が数年前から流行ってますね。これは「フィールドワーク」「プロトタイプ」「ブレインストーミング」など、物のデザインのための手法を経営に用いた方法論で、IDEOという米国のコンサルティング会社によって提唱されました。それが『The Art of Inovation』という本なのですが、本書はこの続編となります。

デザイン思考のもとでイノベーションを起すに当たって、具体的にこんな人材のタイプが考えられる、あるいはこんな役割が求められている、ということを分類・解説した本です。事例紹介がベースになっていて、IDEOの成功事例を学ぶ上でもおもしろいのでは。
本書では10人のタイプが紹介されますが、自分がどれに当てはまるか、どれを目指すべきかを見つけてみるとおもしろいかもしれません。


========


◎まずはどの人を目指すか

おもしろい人に会うと僕はおススメの本を訊くようにしてるんですが、デザイン思考に関する本は何年も前から勧められていたものでした。今回やっと初めて読めたわけですが(というか読んだあとにこれがデザイン思考って気付いた)、提唱者の書いた本に当たれたのはラッキーだったかも。

まずはデザイン思考の定義ですが、「@IT情報マネジメント辞典」によると・・

基本的には“試行錯誤型アプローチ”で、まずプロトタイプを作り、それを用いたテストマーケティング等を通じて実地の試験・検証を行い、そこで問題を発見、解決するというサイクルを回し完成に近付けていく。
IDEOの発想法を解説した「The Art of Innovation」では、「フィールドワーク」「プロトタイプ」「ユーザーテスト」「ブレーンストーミング」などのツールを使った、理解・観察・視覚化・評価と改良・実現の5つのステップからなる方法論として紹介されている。
経験、感性、異領域の出会い・協業を重視する。



まあ読んだ後初めて知ったわけですが、本書ではこれらのアプローチについて、「人」の視点で解説しています。実際にやってみるときに、それぞれのフェイズでどんな人として振舞うべきなのか。

【情報収集する人】
  ①人類学者、 ②実験者、 ③花粉の運び手
【土台を作る人】
  ④ハードル選手、 ⑤コラボレーター、 ⑥監督
【実現する人】
  ⑦経験デザイナー、 ⑧舞台装置家、 ⑨介護人、 ⑩語り部



本書では特に前半部分に紙幅が割かれていたように思います。その次が真ん中の人々。つまり「材料をどう集めるか」と、「集めた材料の加工にどう人を巻き込むか」。
ただし著者も断っているのは、チームにこの10人すべてが必要なわけではないし、チームに応じて演じるべき役割も変わるという点。誰それが「人類学者」の資質がある、というわけではなく(もちろん資質も重要でしょうが)、何をすべきかは相対的に決まります。なので自分が関わるプロジェクトのメンバーを見渡して、足りない役割を積極的にやってみるのもおもしろいかもしれません。
もちろん、1人が複数の役割をこなすこともあると著者は述べています。本書で述べられている10人は、あくまで仮想的な人物像というわけですね。



◎個性的だと思うのは、レールを歩むのに慣れすぎたから?

本書はIDEOで起きた実際の事例を紹介していますが、特に若手社員の活躍を描いているのが印象的でした。そしてその全てが型破りなのも面白いところ。
例えば顧客のニーズを引き出す役割を担う「人類学者」について言えば、ある企業にレポートするために一般家庭を訪問してビデオを取りまくったり、病院のある患者のベットの脇に48時間居座り続けたりと、とことんやってくれてます。

困難を乗り越える役割を担う「ハードル選手」の例で言えば、これはIDEO社員ではありませんが次のような例も。
 ・ある装置の購入を上司に反対されたため、決済申請不要な額の請求書100枚に分割して
  こっそり購入した3M社員
 ・契約を切られても、正社員の後ろにぴったりくっついてゲートをくぐり、こっそりアップル
  の空き部屋に通って開発を続けた派遣社員



本書を読んで思ったのは、デザイン思考であれなんであれ結局マニュアルを読んだのではダメなんですよね。強烈な情熱を持って、自分の信念に基づき道の無いところを歩かなければならない。

本書ではヘンリー・フォードの次の言葉が紹介されています。

「もし私が顧客に彼らの望むものを聴いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう」

しかし彼は速い馬ではなく自動車を提供しました。
同様の事例として本書では、ビデオテープのユーザからニーズを聞き出したら「もっと早く巻き戻しができるデッキ」を求められただろうが、世に登場したのは巻き戻しの不要なDVDだった、と述べています。
イノベーションは表層的なニーズから生まれるのではなく、もっと根源的なところから現れます。
デザイン思考だってIDEOが言い出した方法に過ぎなくて、本当に何かをしようとしたら自分で方法論を編み出さなきゃいけないんだろうな、と思わされました。

色んなフェイズで、色んな役割で活躍している人たちや活躍する方法を学べる一冊だと思います。



** 著者紹介 **
Tom Kelley(とむ・けりー)
IDEOのゼネラルマネージャーで、兄で会社創立者のデイヴィッド・ケリーとともに経営に携わり、IDEOを成長させた。おもにビジネス開発、マーケティング、人事、オペレーションの業務を担当するが、必要とあらば他の社員と同様にブレインストーミングやプロトタイプ製作を実践している。
前著『The Art of Inovation』(邦題:『発想する会社!』)は世界的ベストセラー。
(本書より)

Otoya




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思考法 | 23:57:46 | トラックバック(0) | コメント(8)
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