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ラ・フォル・ジュルネ
【文学】 『神様のカルテ』
「医者の話ではない、人間の話をしているのだ」


『神様のカルテ』

   夏川 草介

   第1巻 2009年8月
   第2巻 2010年9月

   小学館

   ★★★★








今夏に映画化されます。芸能人にあまり興味のないsingですが、宮崎あおい主演となれば話は別です。
原作は結構前に読んでいたのですが。

<あらすじ>
栗原一止は信州の小さな病院で働く、悲しむことが苦手な内科医である。ここでは常に医師が不足している。
専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を三日取れないことも日常茶飯事だ。
そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。
だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。
悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。
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◇地域医療

物語は基本的に病院内の医者の奮闘シーンです。
地域の病院で昼は数十人の患者を抱え、夜は何日も徹夜して救急の外来をひたすら捌くことを繰り返す。
しかも、頑張ったからと言って必ず患者を救えるとも限らない。そんな過酷な仕事。

著者は、(経歴を見ると)地域医療に従事していたので、おそらく自身の体験談がベースとなっているのでしょう。細かい描写までリアリティあふれる、真に迫った内容です。

作中で主人公が突きつけられる問題は、例えば以下のようなものがあります。
・消化器系が機能していない重病人にカステラを食べさせることは正しいか
・大学病院に移り最先端医療を研究し多くの患者を救う


『ブラックジャックによろしく』も同じようなテーマの医療ドラマでしたが、あれはどちらかといえば、医局など医療システムについての問題点に重点を置いた作品でした。

本作は、医者と患者、1人対1人の人としての接し方、繋がりに重点を置いています。
作中で、ルールを厳密に守るあまり患者のことを蔑ろにする上司に、主人公がキレた象徴的なセリフが、冒頭のセリフ。

ここまで過酷な仕事でも、医者と看護師は不平不満…は言いますが、とにかく仕事をこなし続けます。
その本心を、一止の同僚の医者はこう明かします。 

良心に恥じぬことだけが、我々の確かな報酬である

私は医者ほど直接人と深く関わる職業についていませんが、良心に恥じぬ仕事ができているか、とハッとさせられる一言でした。



◇御嶽荘

漱石の『草枕』をこよなく愛するあまり言葉遣いが文語調になった「ドクトル」こと一止(森見好きなら気に入るでしょう
)。少女のような外見で重い機材を担ぎ雪山に登る女性カメラマン。太宰治研究に打込むあまり大学に何年通い続けているかわからない「学士殿」、将来の巨匠と呼ばれる予定(自称)の絵描き「男爵」。

なぜか一風変わった人達が集まるボロアパートでは、事あるごとに誰かの部屋に集まって酒宴が開かれます。
議題はほとんどが、己の将来について。自分は今は伏せる龍であり、ひとたび雨が降ればすぐさま天に駆けのぼる研鑽を積んでいる、といった具合です。

一見するとイタイ子の集まりに見えなくもないのですが、なぜか落ち着く雰囲気のこのアパートの描写が、物語に別の視点を持ち込んでいて不思議とメリハリがついています。

物語では、学士殿が一悶着起こし、結果的に再起のため御嶽荘を離れることになります。
そのときの、一止たち住民の見送りが本当に感動的でした。特に男爵様が、もうね…。
singは、こういう将来の希望に満ち溢れた別れのシーンには弱いんですよ…




◇信州の片隅で


時の流れが緩やかな田舎町で、一歩一歩ゆっくりと確実に進む人たちの物語。
主人公の幼女嗜好細君溺愛ぶりはどうかと思いますが、真っすぐに生きていることがとても大事だな、と思わせてくれます。
他にも居酒屋のマスターや古狐先生などサブキャラクターを含めて、登場人物全員がすごくいい人たちで、読んでいて気持ちよくなります。

映画版も楽しみです。公開されたらレビューします。


** 著者紹介 **
夏川 草介(なつかわ・そうすけ)
1978年、大阪府出身。信州大学医学部卒。医師として勤務するかたわら、2009年に『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は第7回本屋大賞候補作にも選ばれている(最終的には2位)。
(wikipediaより引用)

sing

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文学 | 08:12:31 | トラックバック(0) | コメント(0)
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