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【文学】 『天地明察』
「天を相手に、真剣勝負を見せてもらう」

天地明察
『天地明察』

   冲方 丁

   角川書店

   2009年 11月 30日

   第31回 吉川英治文学新人賞
   第7回 本屋大賞 第1位
   第7回 北東文芸賞
   第143回 直木賞 候補作

   ★★★★★





<あらすじ>
江戸、四代将軍家綱の御代。戦国期の流血と混迷が未だ大きな傷として記憶されているこの時代に、ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること。武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの計画は、そのまま文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。 実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれながら安穏の日々に倦み、和算に生き甲斐を見いだすこの青年に時の老中・酒井雅楽頭が目をつけた。「お主、退屈でない勝負が望みか?」 日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描いた新境地。時代小説家・冲方 丁誕生の凱歌がここに上がる!
公式HPより





今日明日あたり、オリオン座流星群が見られるらしいです。近年の天体現象の予測精度には驚くばかりですね。


◇正確な暦

新しく作る暦は、算術の「理論」と天測の結果である「事実」に正確に合致したものでなければなりません。かつ、それが公家や武士の業務に即し、宗教上も問題なく、さらに日本全国の民衆に受け入れられるものでなければならないわけです。

日本の最強の武器である「外国から取り入れた文化を、日本独自のものに改良する技術」が本作でも生きています。

前述のように、改暦の儀は国家をあげての一大プロジェクトです。ここまでいくと、もはや算術が得意だとかそんなレベルではありません。政治ですね。
様々な要因を検討しなくてはなりません。

この過程で私が最も驚いたことは、暦を作る上で、農民の生活を非常に重要視していることです。
種蒔きや収穫の時期を把握するために暦は不可欠なのはもちろんですが、この時代は米の収穫高が武士の収入に直結するという事情は忘れてはならないところです。暦を変えると、二十八宿も変わりますからね。

本作は、技術者が社会に与える影響を考える上でも格好の素材となるように思います。



◇算術

塾に貼り出された問題は、塾生が競って回答を導き出します。そして、「明察」を得た者が次の出題をする。

江戸時代の理系の教育水準がここまで高いものだったとは知りませんでしたが、武士ですら戦がなくなり己を磨くジャンルを武術から教養にシフトし始めている時代ですから、貧乏に加えて商魂たくましい民衆が数学に興味を持つのも頷けます。

問題の出し合いの精神は、現在ではインターネットに移っているかと思いますが、日本人の「掲示板好き」は産業発展の基礎になっているのかもしれませんね。



◇社会に与える影響

改暦の儀を前に、春海は(保科正之に命じられて、ですが)、民の生活から、文化、宗教、農業、経済など、あらゆる面において、暦を変えることによって生じる影響を検証しました。

私はけっこう感心したのですが、これってDRBFMを行っているわけですよね。

DRBFMとは、例えば、従来あるものを改良する場合、いままでのものから変化する点を洗い出し、新しいものではその変化点がどのような影響を及ぼすのか、を手業を行う前に検討する、という設計の手法です。どのようなもとはトヨタ自動車が社内で使っていたものですが、いまでは技術者の中で常識になりつつあります。

現代においても、2000年問題が騒がれたのはもう10年前になりますが、あれも結構な混乱がおきました。しかし、2000年問題は所詮、データ上の暦がずれるだけの話。PCに関係のない日常生活にはほとんど影響ありませんでした。

しかし、今回は、その時刻の基準そのものを変えようという計画。
国民の全てに影響を与える、幕府の老中レベルが関わる、とんでもない規模の超巨大プロジェクトです。

春海のプレッシャーも相当なものだったのでしょう。本作では、春海の苦悩、困惑、歓喜、などが等身大に描かれているので、感情移入もしやすく、大変感動的でした。とくに、保科正之に出会うまでの、極秘プロジェクトの影が見え隠れするあたりは、個人的に非常に好きな場面ですね。

改暦には、幕府にとってさらに別の思惑もあるのですが、それが以前『島津奔る』にて紹介した内容と同じものだったので、そこがまた面白いところでした。歴史小説の醍醐味のひとつですね。



◇全ての思いを受けて

渋川春海は、趣味の算術がきっかけで、日本が誇る数学者・関孝和に出会います。

酒井の命で派遣された北極出地で知り合った建部、伊藤の夢を引継ぎ、渾天儀と日本版分野を製作し、これが大和暦の礎となります。

また、碁で培った戦略構築の技と残心の姿勢は、暦完成後に採用されるまでの根回しに生きています。
春海の、20年以上も費やす執念も充分驚くべきものなのですが、その間に、何度も何度も、渾身の勝負に破れています。
「負けるのには慣れている」という春海ですが、悔しくないわけがない。それでも、最後には時の天皇陛下の決定さえも覆す事を、誰よりも一番信じていました。
生涯をかけて改暦に挑みます。

著車はライトノベル出身ですが、全くそんなことを感じさせない高度な文章力で、途方もない大事業を魅力たっぷりに描いています。本屋大賞第1位に何の異論もありません。



** 主人公紹介 **
渋川春海(しぶかわ・はるみ)
寛永16年(1639年)江戸幕府碁所・安井算哲の子として京都で生まれる。承応元年(1652年)、父の死によって二世安井算哲を継ぐ。囲碁の研鑽の一方で天文・数学・暦学などを学び、21歳の時に各地の緯度を計測して、当時用いられていた誤差のある宣明暦からの改暦を申し出る。申し出ること三回、ようやく朝廷に採用され、春海がつくった新しい暦は、貞享暦として後の太陰暦の基本となる。その功により貞享元年(1684年)碁所をやめ初代幕府天文方に任じられる。正徳5年(1715年)77歳で没。


** 著者紹介 **
冲方丁(うぶかた・とう)
1977年生まれ。95年埼玉県立川越高校卒業。99年早稲田大学第一文学部中退。96年『黒い季節』で小説家としてデビュー。97年「シェンムー」でゲーム制作者としてデビュー。2001年「ピルグリム・イェーガー」で漫画原作者としてデビュー。03年「蒼穹のファフナー」でアニメ脚本家としてデビュー。
文藝春秋HPより

** この作品を紹介しているサイトさん **
・「404 Blog Not Found」さん
・「雲外の峰」さん
・「武雄市長物語」さん
・「情報考学」さん
・「本読みな暮らし」さん

** 参考リンク **
角川書店 天地明察 公式HP

sing

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:小説・文学

関連するタグ sing 【小説】 【時代小説】 【歴史/人物】 【科学/技術/専門】 冲方丁 ★★★★★
文学 | 20:10:20 | トラックバック(0) | コメント(0)
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