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【経済産業】 『標準化ビジネス』
標準化戦略の決定版!



標準化ビジネス 『標準化ビジネス』

 藤野仁三・江藤学共著,白桃書房,2009年12月
 ★★★★

 <目次>
 1.標準の歴史
 2.標準とビジネス
 3.標準の技術的効果
 4.標準の作られ方とその効用
 5.標準の国際性
 6.新しい標準と認証ビジネス
 7.標準の法的リスク
 8.主要国の標準化戦略
 9.標準の企業戦略
 10.標準化の事例



さて今回は、最近出た(と言っても半年以上経っちゃいましたが)標準化の本をご紹介。
標準とは、例えばネジのオス/メスの形を決めるなどして、みんなで同じ部品を使えるようにすること。技術開発や、ひいてはビジネスの普及戦略に欠かせません
(詳しくは「標準ってなんだ?」もお読み下さい)


本書冒頭では、例えば日本における鉄砲の普及を例に、根来寺(鉄砲武装の傭兵集団"根来衆"の根拠地)国友村(名砲"国友筒"を量産)での技術波及の様子を紹介したりと、歴史的経緯も参考におもしろく書いてくれています。
「標準化」の基礎と応用について本当にわかりやすく、しかも簡潔かつ網羅的に示されており、標準化の教科書として決定版になるのではと思います。



========


◎標準は技術を殺す

本書の強烈なメッセージの1つが、「標準は技術開発を終焉させる」ということ。
標準化が策定されることでイノベーションがストップする点について、具体的に例示しています。

・試験・検査方法の標準を策定すると…
規定された測定条件以外での開発インセンティブを阻害する
(「CO2排出量○○以内ならOK」が標準になれば、それ以外の開発をする意味が無くなる)


・インターフェイスの標準を策定すると…
やがてインターフェイス能力が限界になったとしても、代替する優れた技術の活用は阻害される

・性能標準の標準を策定すると…
規定の性能に達した後は、研究開発がされなくなる
(規定のCO2排出基準をクリアしたら、もう開発止めたってどうでもいい)


・仕様標準を策定すると…
標準化した部分についてはそれ以上開発競争が行われない(互換技術が育たない)

かつてイギリスで銃の部品を標準化しようとしたとき、職人たちの反対に遭ったという話が紹介されています。一品モノの銃を精巧に創り上げる職人にしてみれば、部品を規格化されたら自分たちの熟練技術(=個性)を活かすことができません。
職人気質が標準化を阻み、そして標準化が職人を殺すというのは、おもしろい例ですね。



◎淘汰されるのか、淘汰する者になるのか

標準が技術開発を停めるなら、標準は悪なのか? というとまた話は別。著者は標準化がもたらす「間引き」の効果に、イノベーション促進があると指摘します。
鉢植えに芽がたくさん出たとき、そのいくつかの芽を摘んでしまえば、残された有望な芽はより強く成長します。すなわち、複数ある開発方向のうちのいくつかが標準化により潰れることで、残された技術の発展がより進む。このような技術開発の方向の選択に標準化の意味があると著者は述べます。

ある芽が潰れ、ある芽が生き残る。
この生存競争・進化の競争は企業の競争活動そのものであり、自らが生き残り、かつ自らの利益を最大化しようとする企業にとって、だからこそ標準化戦略は欠かせません。

ポーターの競争戦略との関係についても次のように整理されています。

3つの基本戦略
①コストリーダーシップ(他社より低価格化)
②差別化戦略(自社製品の特徴を顕著にする)
③集中戦略(特定の狭いターゲットに特化)
  標準化の効果
⇔ コストダウンは全社共通して得られてしまう
⇔ 市場は拡大するが、差別化は困難
⇔ 市場は拡大し、集中は不可能になる

このことから、標準化された領域では競争は成り立たないことがわかります。
ということは、相手の得意領域や調達先・納入先を標準化してやれば、自分だけが強みを生かせます。もちろん言うは易しではありますが、こうして整理してみると、標準化のあり方も理解しやすくていいですね。



◎「企業」をブラックボックスで見れば、話は早いが…

 ・TVの値段が赤字スレスレ、ところがレコーダなど周辺機器は利益率大
 ・部品それぞれでは競争力が出せないけれど、完成品なら品質で大きな差を出せる


それぞれの前者と後者。前者は競争ができませんが、後者は差別化のための環境が整っています。こうした環境を創り出し、かつ自分が後者になるためには、相当の戦略が必要ですね。
ただ、それができれば誰も苦労しないって話です。何しろ相手がいることなので。

ところが、「川上から川下までを自分で持つ」という日本企業であれば、こうした戦略を取ることも可能であると著者は述べます。
自社のある部門の商品を使ってその領域の競争環境を平滑化し、他方別の部門で利益を上げれば、トータルでは十分に採算が取れる、という皮算用。要するにそれぞれの業界領域にチャネルがあるので、これまでに述べられた理想的な標準化戦略も比較的やりやすいってことですね。

これはぜひトップマネジメントにがんばって欲しいところですよね~。
TVでいくら、レコーダでいくら、なんて部門ごとに利益を追うのはもはやナンセンス。自社の競争領域はどこで、その競争で群を抜くためにはどの技術開発・どの部門がサポートに徹すればいいのか、それを見極めた全社的なビジネスを日本企業にも見せて欲しいと思います。


ただ、こうした戦略に徹することが日本企業にできるのかどうか、僕は疑問に思います。

例えばインテルは、自社のマザーボード技術を標準化した上で、台湾メーカーに技術供与し、その後チップビジネスに注力しました。標準化されたマザーボードは低価格で市場に普及しましたが、利益率も激減して台湾メーカーはほとんど儲かりません。一方、これに載せるチップだけを売ることにしたインテルはがっぽり! という今や教科書的なビジネスモデル。

ところで、当初インテルでマザーボード開発をしていた技術者たちは、どこに行ったんでしょう。
台湾メーカーに技術供与し、ビジネスモデルが成功したらポイですか?

人材流通が盛んで転職が当たり前の外国なら、こうした戦略もいいかもしれません。
でも日本企業だとどうでしょう。利益の出なくなった技術に対して、企業ってけっこうドライでは。にもかかわらず技術者が使えなくなること前提の戦略を、果たして取ることができるでしょうか。



◎相手を倒す、それだけが標準化じゃない

競争戦略的効果もおもしろいんですけど、僕が興味深いと思ったのは標準のキャッチアップ効果です。国際的な標準化に関して、本書では例えば次のような事例が紹介されていました。

・戦前における日本の「標準調査室」
これは海外にどのような標準があるかを調査した機関。当時の日本製品に付加価値などないので、外貨を稼ぐためには海外仕様にマッチした部品を作る必要がありました。
途上国にとっての市場は国外になるわけですが、市場を知るためのツールとして標準が用いられていた事例です。

・欧州の標準化戦略「ニューアプローチ」
EU成立のためにはヒト・モノ・カネの統一が必要でした。ヒトの流動のためにビザの廃止を、カネの流通のためにEuroの導入を行ったわけですが、モノにおいては標準化が使われました。
これを契機として、たとえば通信分野における欧州の影響力は強力なものとなっています。

・TBT協定の役割
TBT協定は国際標準に関する条約の1つで、ルールの1つに、「最新の技術情報のレポートを規格書の形で得られる」というものがあります。最近は標準のマルチ化や特許問題により機能不全に陥っていると指摘されるTBTですが、本書ではこのレポート機能(通報義務)がある限り意味があると言っています。

標準とは技術を公開して普及させるものです。
「標準化戦略」というと競争ツールとしての側面に目がいきがちですが、立場によっては技術のキャッチアップにも重要な効果を発揮することがわかりますね。



さまざまな効果を持つ標準化戦略。政策にもよっていたりと使い方が難しいですが、企業戦略を考える上では非常に参考になるのでは。本書は事例も多く紹介しており、標準化を学ぶ人には必見の一冊。興味のある方はぜひ手にとってみて下さい。


** 著者紹介 **
藤野仁三(ふじの じんぞう)1949~
福島大学経済学部を卒業後、日本技術貿易、モリソン・フォースター法律事務所に勤務。その間早稲田大学大学院方角研究科修士課程修了。現在は東京理科大学専門職大学院知的財産戦略専攻(MIP)教授。
標準化研究の第一人者で、米国知財法にも造詣が深い。藤野氏の米国事例研究が無ければ、日本の標準化研究は数年遅れていただろうと言われている。

江藤学(えとう まなぶ)1960~
経済産業省技術環境局認証課長、経済産業研究所コンサルティングフェロー、一橋大学イノベーション研究センター教授。
大阪大学大学院基礎工学研究科を終了し、通商産業省に入省。産業技術総合研究所工業標準部長、経済産業省産業技術環境局基準認証政策化工業標準調査室長などを歴任し現職に。
本質的な部分をついて非常に分かりやすく述べるので、江藤氏の講演は聞いていて非常におもしろい。氏曰く、「戦いを略して楽をするのが“戦略”である」。



** 参考レビュー **
標準化戦略ってなんだ?
よくわかる標準化シリーズ第1弾 ⇒『標準化戦争への理論武装』
よくわかる標準化シリーズ第2弾 ⇒『コンセンサス標準化戦略』
よくわかる標準化シリーズ第3弾 ⇒『特許と技術標準』
よくわかる標準化シリーズ第4弾 ⇒『世界市場を制覇する国際標準化戦略』
さらに標準化に関するレビューはこちら
Otoya


テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

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経済産業 | 00:32:25 | トラックバック(0) | コメント(0)
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