■レビュージャンル
■テーマ別記事リンク
■管理人プロフィール

Otoya sing です.
地震の影響はありませんでした.
通常運営してまいります.

■最新記事
■カウンタ


当サイトではきれいなお姉さんを
全面的に支持します

■最新コメント
■最新トラックバック
■月別アーカイブ
■検索フォーム

■RSSリンクの表示
■QRコード

QR


ラ・フォル・ジュルネ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


関連するタグ
スポンサー広告 | --:--:--
【文学】 『船に乗れ!』 (1/2 音楽編)
「演奏している津島君は、最高にきれいです。」



『船に乗れ!』
   � 合奏と協奏
   � 独奏
   � 合奏協奏曲


   藤谷 治

   JIVE

   2009年7月

   2010年本屋大賞 第7位

   ★★★★




<あらすじ>
音楽一家に生まれた僕・津島サトルは、チェロを学び芸高を受験したものの、あえなく失敗。不本意ながらも新生学園大学附属高校音楽科に進むが、そこで、フルート専攻の伊藤慧と友情を育み、ヴァイオリン専攻の南枝里子に恋をする。夏休みのオーケストラ合宿、市民オケのエキストラとしての初舞台、南とピアノの北島先生とのトリオ結成、文化祭、オーケストラ発表会と、一年は慌しく過ぎていく。書き下ろし、純度100パーセント超の青春音楽小説。
(BOOKデータベースより)


2010年本屋大賞 第7位です。いま流行りの青春音楽小説です。
感想は、音楽編と物語編の2回に分けて書いていきます。



◇クラオタ

音楽が好きな人は数多くいますが、たとえば趣味で楽器をやっている人でも、作曲にまで手を出す人は少ないです。ましてや楽典や音楽史などの知識がある人は(音大生、プロを除くと)極めて稀です。だからどうということはありませんが。

本書は"青春音楽小説"です。特に音楽の描写には非常に力を入れており、どんな音色で鳴り、どんなテンションで進む演奏かを"具体的に"想像することができるほどです。
その反面、音楽の専門用語が大量に出てくるので、予備知識のない人は入り込みにくいかもしれません。
例えば、こちら↓。

「第1主題が提示され、主題が展開され、第2主題が提示され展開され、対位法が駆使され、主題が繰り返される。しかし機械的に進行しているところはひとつもない。第1主題のはらんでいる緊張感と高揚が、第2主題の穏やかさによって慰撫され、やがて2つの主題は互いに大きくなって、情熱的としかいいようのないクライマックスのフォルティシモへ進んでいく。」

これのどこが「端正なソナタ形式」なのか分かる人、いますか? 急病人が出た飛行機に医者が乗り合わせるくらいの確率ですよね。もうちょっといるかな?
あ、singはクラオタ(クラシック音楽オタク)なので、もちろんすごく面白かったです。
ちなみに、↑の文章中でソナタ形式についての記述は1文目だけです。教科書的な解説なだけの気もしますが。「端正」なところはわかりません。


本書は特に、作中の指揮者の指示(怒号)が具体的というか詳しく書いてあるのですが、やはり経験したことがあるとよくわかりますね。同時に自分も指摘されているような感覚になります。合宿のシーンなんかも、楽器の運搬やら練習場所と時間の確保やら、楽器をやったことのある人間なら必ず出会う苦労が描かれているのは親近感がわきました。
最近の音楽小説はその辺を狙いすぎていて、少しあざとさも感じたりしますが。

個々の楽曲のストーリーや背景についても詳しく解説されているので、(音楽用語さえわかれば)知らない曲でも楽しめます。



◇演奏

主人公達は子供の頃から個人的にレッスンを受けているため、合奏をした経験がありません。独奏ソロでどれだけ巧くても、他人の音を聞きながら、指揮を見ながらの演奏には経験が必要です。1巻ではそのあたりの苦労がリアルに書かれています。
2巻は「独奏」。1巻でアンサンブルがわかってきたところで、ではそもそも「演奏」とは何か、を追求します。
ここで主人公は留学までして、基本に立ち返り、初歩の初歩、楽器の構え方から鍛え直すことになります。それを突き詰めていくと、自分とは何か、どんな演奏が「自分」なのか、という問いにぶつかるわけですが、主人公はきっちり自分を見失います。

合奏とは、複数人が同時に演奏することではありません。他人に合わせることでもなく、互いの主張を競わせることでもありません。
メロディと伴奏、という形態の(現在流行のロックやポップスのような)音楽では楽器ごとに主役と脇役がはっきりしていますが、クラシックのような対位法を駆使した(バッハを頂点とする)音楽ではすべてが主役です。
高音の楽器は(メロディのためではなく)高い音を出すために、低音の楽器は(ベースのためではなく)低い音を出すために。
私は、クラシックなど器楽曲は、高音・中音・低音の役割がどんどん変わっていくのが面白いと思うのですが、私だけですかそうですか。



◇感情

本作では、音楽についての考察が鋭く、それでいて"高校生の解釈"を的確に表現しています。
決して稚拙というわけではなく、ストーリーに沿って変わっていく主人公の心情が、音楽に与える影響がとてもリアルに伝わってきます。

本作のユニークなところは、演奏も鑑賞も哲学(後述)も、すべてが主人公の解釈を経て描かれることです。
音楽小説ではよく「この曲は○○と言われている」というナレーション的紹介だけで済ますことがあるのですが、本作のテーマを示すにはそれでは足りないわけです。それを象徴する1文がこちら。
聴く人がいて初めて音楽。たとえ誰もいない場所で独奏した場合にも「自分」という観客は存在している

しかし私は、本作の真のテーマは音楽ではないと考えています。それについては、また次回



** あまり関係ないかもしれない参考リンク **
『船に乗れ!』特設サイト
『船に乗れ!�』連載開始記念特別インタビュー
・樋口裕一の筆不精作家のブログ 「音楽は思想である!」

・クラシック音楽初心者の方、詳しくなりたい方は、こちらこちら、オススメです。この人の考え方、共感します。

sing

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

関連するタグ sing 【小説】 【文化/芸術】 【音楽】 藤谷治 【文芸書】
文学 | 12:00:00 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。