2011-02-09 Wed
お金のギャンブルで身を持ち崩す人はある程度自分でも気付きますが、時間のギャンブル、それも決して勝てないギャンブルに身を持ち崩す人は、自分でそのことに気付いていない。ドキッとさせられた冒頭の1文。
ハックス系の書籍をたくさん書かれている小山龍介氏ですが、人に勧められて1冊読んだのでレビューします。まず読んでみたのは、時間管理の効率化のアイディアが満載された『TIME HACKS!』。著者が実践する89の方法・概念が紹介されています。
高密度のわりには簡潔丁寧で、2時間くらいで読めてしまいました。

『TIME HACKS!
劇的に生産性を上げる「時間管理」のコツと習慣』
小山龍介著,東洋経済新報社,2006年12月
★★★★
<目次>
1.ToDoハック -一瞬と一生
2.スケジュールハック -リズムとメロディ
3.時間効率ハック -ジャズとトランス
4.時間投資ハック -効率と効果
5.チームハック -足し算と掛け算
6.計画ハック -微分と積分

僕が特におもしろいと思ったのは次の3点。順番に説明したいと思います。
①スケジュール管理、ToDo管理
②習慣化のための手法
③自分コストに基づく短期戦術、長期戦略
◎アイビー・リー・の25000ドルのアイディア
例えばToDo管理に関して著者が紹介するのが、米国の経営コンサルタント・アイビー・リーのアイディア。
彼は鉄鋼王チャールズ・シュワブに対して「能率を50%上げる方法がある」として1つの提案を行いました。チャールズはその方法を試したところ見事に職場の効率が50%上がり、2万5千ドルの報酬を渡します。これって20世紀初頭の話なので、当時の2万5千ドルって結構大金です。
そのアイディアが何かと言うと、
「終業時に明日やるべきこと6つを書き出し、重要度順に番号をふらせる」
というだけのもの。
ところが僕もこの方法試してみたんですけど、目に見えて効率が上がるんですよね。
ToDoの書き出しというのはよくやられていると思うんですけど、その中から優先順位をつけて、目移りしないように視野を狭めるというのも、とても大事なことだと思いました。
本書では他にも、ポストイットの活用法や、リズム作りのための曜日毎の仕事パターン化など、簡単に実践できて効率の上がりそうな方法がたくさん紹介されています。
◎トランス時間とジャズ時間
スケジューリングの観点で一番おもしろかったのは、トランス時間とジャズ時間という考え方。
人には、周りが見えなくなるくらい目の前のことに没頭できる状態と、視野が広がり全てを見渡せるように頭が冴え渡った状態があって、著者は前者をトランス時間、後者をジャズ時間と定義します。
この2つの集中力にはそれぞれ適した仕事があります。例えば報告書作成はトランス時間に一気にやるべきだし、ミーティングのような多数の人と意見を戦わせて場を支配すべき場合には、ジャズ時間が向いています。
この違いを理解して、適した集中力を適したTPOにどう発揮すべきか。そのための方法もいくつか紹介されていました。ぜひ実践していきたいです。
スケジュール管理やToDo管理の手法はみんな試行錯誤してることだと思うので、知ってることもたくさんあると思います。僕も既に実践して失敗したものがいくつか載っていて、やっぱり合う合わないはありますね。ただ知っていて損をすることは1つもないし、必ず1つは発見があると思います。
◎小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただ1つの道
これはイチローの言葉ですが、本当にそうですねえ。
マネジメント手法は世の中に数多あるけど、知ってすぐにできれば誰も苦労しません。当たり前のことを粛々とやる、この難しさは永遠の課題だし、そして何よりも効果があることだと思います。
習慣化の手法の1つとして著者が挙げるのが、「成果を積み上げて、1ヶ月単位でレビューする」というもの。これにより日々の成果を実感できて、前進感が得られます。また、後述する「時間簿」に基づき投資効果の少ない項目を排除しつつ、定期的に成果を振り返ることで、ブラッシュアップも実現できます。
課題を挙げるとすれば、「仕組みづくりをどうするか」が問題になるかと思います。
僕は3年単位の中期目標設定、3ヶ月単位の短期目標設定、1ヶ月単位の定期レビューということをやっていますが、イマイチうまくいってません。波に乗った感がまだ出てこなくて、仕組み化のレベルでまだ課題が残されているように感じるんです。
フィードバックをうまく反映させる仕組みや、PDCAサイクルのCheckをActionに転換する方法って、意外にノウハウの要ることじゃないかと思います。効率化手法って本で読むのは簡単だけど、飲み下して実際に実行できる方法に落とし込むのって意外に難しいんですよね。。1つ1つ試行錯誤していきたいです。
◎戦術なくして戦略は立たない
さて、本書の目玉はやっぱり、時間を投資と考えた場合にどう振舞うか。
著者は給料を勤務時間で割って「自分コスト」を算出し、これを基準に効率を考えます。コストに合わないことをやらないというのはもちろんのこと、ファンダメンタル投資とテクニカル投資、インカムゲインとキャピタルゲインなどの概念を使って、どう投資効率を上げるべきかを考えています。
どの時間を何に使ったかを記した「時間簿」を使うのも1つの手。プランだけでフィードバックがなければ意味がないですからね。これは僕には合わなさそうですが。
「年収の半分を投資に使え」と言う言葉もおもしろくて、例えばこれは「勤務時間の半分を経験したことのないことに取り組め」という意味も含むんですが、レバレッジのかけ方の大切さを再認識しました。これって概念だけはみんな思ってることだと思うけど、具体的にどうするかってなるととても難しいことだと思います。
こうしたコスト意識が自分としては直近の課題。仕事するとホントに時間が経つのって早いですよね……。
最後に著者は、戦略よりもまずは戦術が大事だと述べています。
これはあくまで戦略を持っていることが前提だと思うんだけど、どれだけ立派な戦略を考えたとしても、戦術レベルで負け続けては大局で勝つことは難しいんですよね。そりゃ戦略を考えるのは誰だって楽しいけど、頭でっかちじゃ意味がないです。
どうしても日々だらけてしまう僕としては、耳に痛い言葉でした。
他にもチームを持ったときにどう効率化を図るかなど、盛りだくさんの内容でした。
チームの話は僕にはまだ早いので割愛。また時間が経ったら読み直したいと思います。この著者の他の本もぜひ読んでいきたいと思います。
** 著者紹介 **
小山龍介(こやま りゅうすけ)1975~
京都大学文学部哲学か美学美術史卒業、大手広告代理店勤務を経てサンダーバード経営大学院でMBAを取得、現在、松竹株式会社プロデューサーとして歌舞伎をテーマにした新規事業の立ち上げに関わった後、株式会社ブルームコンセプトを設立。
本書のほかにも『整理HACKS』『IDEA HACKS』『STATIONERY HACKS』など、ハック系の著書多数。
著者ブログ:「ryu2republic:小山龍介ブログ」。
(本書、wikipediaより)
** ライフハックにまつわる関連レビュー **
・『思考の整理学』(1) (2) (3)
→アイディアを語る上で必読の一冊
Otoya
=== ノート ===
◎スケジューリング
【基本概念】
・パターンを意識することはロールを意識することにつながり、仕事がシンプルになる
・ToDoはリズム、スケジュールはメロディ
【スケジュール・ToDo管理の効率化のための具体的方法】
・やるべきことを「今」やる
→これができれば苦労しないけど結局ここに行き着く。。
・アイビー・リーの2万5千ドルのアイディア「能率を50%上げる方法」
-終業時に明日やらなければならない6つのことを書き出させ、重要度に応じて並べさせる
-翌朝そのリストを確認し、プライオリティ順に片付けさせる
・15分以上の作業が発生するもの(書類作成なども)はスケジュールに書き込む
→ToDoの規模を視覚化できるので、期限を落とすことがなくなる
・自分へのアポイントメントを入れる
【リズム作りのための具体的方法】
・曜日ごとにやる仕事を決める(守・破・離)
-月曜日には人に合わない(少なくとも午前)
→リズム作りのためにもこれは実践したい
-水曜日はできるだけ人に合う
-金曜日の夜は飲まない
→飲まないというか、午後の時間を使って来週の計画を立てる必要がある
・スケジュールは2週間単位で眺める
・スケジュールパターン表を机の前に貼る
-いい加減に、遊びをもってやる必要がある
-パターン化は時間をかけてブラッシュアップしていく
【所管】
・ToDo管理はやっぱり大事だけど、問題はどう習慣化するかだなあ・・・
・スケジュール管理は大体できているが、将来チームで作業をすることになったとき、共有という観点で再度読み直したい
◎習慣化
【基本概念】
・「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただ1つの道」(イチロー)
【習慣化を実現するための具体的方法】
・運動したあとにビールを飲む(快感原則を用いた習慣化の一例)
・やらないことリストの作成
-悪い習慣を書き出す
-またこれは、パーソナルブランディングにも繋がると著者は指摘
・中長期のToDo(中長期継続して行うToDo)もToDoリストにアップする
→これは実践してるけど、うまくいっていない・・
が、やらないよりははるかに成果が出てるはずなので、うまくできる方法を考える
・積み上げた成果を1ヶ月単位で振り返り、レビューする
-完了事項を手帳などにメモする(ただし簡単に数字などだけでよい)
-毎日、進んでいる感覚が得られるような数字を使うこと
→今もやってるけど、寝る前だからいけないのかな。モバイルを使うべきか。でもこれは必要だと思う
◎時間効率化(短期的効率化)
【基本概念】
・ニュートン時間とベルクソン時間
(1)トランス系状態(近視眼状態)でやるべきこと
・始業前にその日の仕事を終わらせる
・メール返信は一気に
→これはジャズ系でやるべき単純作業だが、ジャス系時間にやることでトランス状態に引き込めるということか
・スケジュール管理、ToDo管理、目標設定
(2)ジャズ系状態(リラックス状態、広視野状態)でやること
・午後にMTGを設定
(3)集中できないときにすべきこと
・①単調作業、②形式的MTG、③ネットサーフィン
【集中力を高めるための具体的方法】
・アイマスクを携帯
・掃除で集中力を高める
・ジャズ系とトランス系の音楽を用意して聞く
・喫茶店の利用
→①スケジュール管理、②ToDo管理、③目標設定に適している
→他に温泉の利用も著者は提案
・集中するための儀式を行う(内面ではなく環境から入る)
・休む時間(休日含め)を用意することが大事
【整理術の紹介】
・机の整理においてはその他BOXの導入が効果的
→机の上はあくまで作業場所
・名刺は整理せず、時間の試練を越えたものだけデータベース化する
◎時間投資効果(長期視点での計画化)
【基本概念】
・コアコンピタンスはなにかを考えること
・効率を考えるのも大事だが、それよりも効果を考えることがさらに大事
・戦術が戦略に先行する →戦術なくして戦略の構築はありえない
【計画立案の観点での具体的手法】
・自分コストを算出し、コストベースで考える (=給料/勤務時間)
→必ずしも現在の給料で価値を計るべきではないと思うが、ひとつの指標にはなりそう
・年収の半分を投資する
→これは単にお金を何かに使うという意味ではなく、勤務時間の半分を経験投資できることに使うべき、という意味
-ルーチンワークは勤務時間の半分、残りの半分は経験したことのないことに取り組んでみる
-資産(将来の時間;経験や人脈など時間をかけて得られたもの)
=他人時間(活きていくために費やす時間)+自分時間(自分のために費やす時間)
・投資銘柄はテクニカル投資(短期的視野、敏感)ではなくファンダメンタル投資(長期的視野、流行に左右されない)
-ただし新製品にとりあえず飛びつくなど、テクニカルな投資もある程度は必要
・人生計画に年度を取り入れ、できれば四季を取り入れる
-春は新しいこと、夏は短期集中、秋は収穫の季節なので成果を楽しみ、冬にゆっくり振り返る
-区切りには旅行の計画を入れて、人生に読点をもたらす
・ゴール設定は3年単位で
【フォードバックの観点での具体的手法・判断基準】
・フィードバックのための時間簿の導入
-チェックポイントは、時間の無駄遣いがあるかどうか
→ただしこの管理は大変かと。よほどうまく仕組みを考えなければならない
・時間投資に対する利益の関係
-時間投資が少なく利益大 →維持
-時間投資が多いが利益大 →効率化を図る
-時間投資が少なく利益小 →要検討
-時間投資が多いが利益小 →撤退
◎面白そうだけど現時点では自分には合わないアイディアを一応メモ
・ポストイットボード(ドキュメントフォルダ)を持ち歩く
→緊急度と重要度の4象限なども予め記載
→ToDoの一元管理を考えると、自分には合わなさそう
→「ポストイットを予め貼っておく」は今もやってる
・スケジュール帳はカラーでプリントアウトする
・スケジュールを繰り返し設定にする
→昔一度実践して失敗したが、再度できるようにしたいところ
・携帯電話に「やること」を待ち受ける
→デスクトップでやるのはありかも。ケータイは日々の管理が難しそうなので手を出すのは控えるべきか
・ToDoリストをスケジュール帳にポストイットで貼る
→会社ではすでに実践してる。プライベートではここまでやる必要はなさそう
・午後に「がんばるタイム」を設定
→やりたいけど、打ち合わせラッシュで実現は難しそう
・会議室を予約しての擬似会議
◎その他
・現代はジャズ系の集中力が必要なのではないかと著者は指摘
・8割仕上げ、2割は余白
・プロジェクトを説明するストーリーはなるべくシンプルにした方がいい
・チームで仕事を行う場合、分業の統合を行うために、知らない分野の本を10冊斜め読みする
・矛盾する2つのことを同時に求める「オフサイドルール」
→ルール作りにより、より創造的なアウトプットが期待できる
【電通鬼十側】
1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2.仕事とは、先手先手と働きか掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取組め! 小さな仕事は己を小さくする。
4.難しい仕事を狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
5.取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
6.周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
7.計画を持て! 長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.自信を持て! 自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
9.頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ! サービスとはそのようなものだ。
10.摩擦を怖れるな! 摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。
【サバイバルチームに必要な10人のスタッフ】
・『イノベーションの達人』(トム・ケリー・ジョナサン・リットマン著)より
・人類学者、実験者、花粉の運び手、ハードル選手、コラボレーター、監督、経験デザイナー、舞台装置家、介護人、語り部
【ハーマンモデル】
・新しく右脳的 …ひらめきタイプ
→論理は飛躍し、他人はとてもついていけない。芸術家タイプで足元をすくわれやすい
・新しく左脳的 …論理派タイプ
→論理を積み上げる。コンサルタントがこのタイプで、感情を理解しないので人の感情を逆なでしやすい
・古くて右脳的 …人情タイプ
→保守的なタイプで、論理よりも人情で動き、理論派タイプと相性が悪い
・古くて左脳的 …こつこつタイプ
→プロジェクトの進行管理スタッフによくいて、組織になくてはならないが、融通が利かないことも
→ひらめきタイプと相性が悪い
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小山龍介さんの「TIME HACKS!(タイムハック!)」を フォトリーディング。 TIME HACKS! smoothさんの記事に触発されて購入しました。 純粋に、効率的な仕事をする方法から、 人生の質を高めることにまで言及した本です。 ブログランキングをハック!
2011-02-11 Fri 17:30:48 | フォトリーディング@Luckyになる読書道
2011-02-11 Fri 17:30:48 | フォトリーディング@Luckyになる読書道