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【文学】 『風が強く吹いている』
走り抜け! 「速く」ではなく「強く」――


『風の歌を聴け』
『風が強く吹いている』

   三浦しをん

   2006年

   新潮社

   ★★★★


   映画版HP








本日は、全国都道府県対抗男子駅伝競走大会が広島で行われましたね。初優勝の栃木県、おめでとうございます。
さて今回は時期を数週間逃がしましたが、日本の正月の風物詩、箱根駅伝がテーマの物語です。
小出恵介主演で映画化もされた有名作品です。



<あらすじ>
ある春の日、蔵原走(寛政大学1年)は、高校時代にインターハイを制覇したスタミナと脚力を生かして、万引き犯として逃走中、清瀬灰二(寛政大学4年)に つかまり、成り行きで清瀬が住むボロアパート、竹青荘(通称アオタケ)に住むことになり、そのまま箱根駅伝を目指すことになる。 しかしアオタケに住んでいる住人は、運動音痴のマンガオタク、25歳のヘビースモーカーなど、とても走れるとは思えないものばかり。練習を重ねるにつれ住 人たちはタイムを縮めていくが、走は「適当に話を合わせておけばいいや」ぐらいしか思っていなかった。しかしある日、走と清瀬が衝突、その直後清瀬は過労 と貧血で倒れてしまう。(中略)たった10人、しかも寄せ集めの陸上部員たち。果たして、彼らは本当に「箱根駅伝」に出場できるのか?
Wikipediaより




◇ボロアパートの正体は

竹青荘(ちくせいそう)の連中は走る素質があるので、というか素質があるから清瀬に集められたわけですが、物語上の役割から箱根駅伝で走る区間まで見事にハマるように考え抜かれた構成になっています。
多少ご都合主義な雰囲気を感じないでもありませんでしたが、清瀬を人間関係の中心に持ってくることで、登場人物が多いにもかかわらず、ムダがなくすっきりした物語となっています。

また、本作に少しだけ含まれている恋愛要素も、それは走たちの人間的な成長をより際立たせるための演出として、効果的に使われています。そして、ここが本当にうまいところだと思うのですが、このような効果を狙っているが故に、恋愛に関しては結末を描いていないのです。
そこまでやったら物語がブレるから、という意味合いもあると思いますが、全体的にバランス間隔が優れた作品であると思います。

それなのに、主人公である走(かける)という名前は狙いすぎている割に、たいして意味がないことがとても残念。というか、「走る」と「走」がダブって読みづらいんです…



◇強くなる、とは

本作の影の主人公ともいえるのはやはりこの人、清瀬灰次(きよせ・はいじ)です。
走を竹青荘に拉致誘い、住民10人の衣食住の世話をこなし、全員の個人別練習メニューを組み、寛政大学陸上部の実質的な監督であり、選手たちの心の支えにもなった、ものすごいバイタリティの超人です。そして、箱根駅伝参加の発起人であり、誰よりも思い入れが強い人でもあります。

清瀬は、箱根駅伝に出場し「頂点を目指す」ことを宣言しますが、「頂点」が何を指すかという解釈の違いから対立が起こったりもします。
それでも清瀬は、ただ速く走り優勝することが頂点ではない、と固く信じています。

そこで、清瀬が走に言った言葉が本当に心に沁みます。
「いいか、過去や評判が走るんじゃない。いまのきみ自身が走るんだ。惑わされるな。振り向くな。もっと強くなれ」
はじめはこの言葉の意味がわからなかった走も、清瀬の思いを知り、黙々と目標にたどり着くための努力をし続ける清瀬を見て、次第に悟ります。

私は、本作は走から見た清瀬の物語であると思っています。
走は清瀬と出会うことで成長することが出来ましたが、それは清瀬に頼りすぎてしまっている部分が多々あることは否定できないところです。
一方の清瀬は、自分のやりたいこと、やるべきことをしっかり認識し、数年をかけて地道に取り組む姿勢を既に身につけています。
走と出会ったことで、たしかに実際に箱根駅伝をめざすきっかけと戦力を得ましたが、走のような人間が現れるかどうかも分からないのに、自分を信じて数年間も準備し続けた清瀬こそ、尊敬できる人物だと思うわけです。



◇走る、とは

もちろん、竹青荘の住民全員の努力は凄まじいものだと思います。本作には様々な練習風景が描かれていますが、実際に行うのは相当に厳しいはずです。

そもそも駅伝は襷をつなぐ競技と言っても、最終的に一人で走るものです。実際、走もそう思っていました。
しかし、だからこそ、仲間の存在が非常に大切になってくる、ということを本作は見事に描いています。単に「チームワークがいい」と一括りにするのは勿体無いくらいの、竹青荘住民の絆の強さに、大変感動しました。

そのような仲間に支えられ、成長した走が見いだした「走ること」とは何か。
選ばれた者が、ストイックに努力し続けることでしか見ることが出来ない世界とは。



著者の三浦しをんは、「文章」がうまいというより「描き方」が大変うまい作家だなぁと感じました。
文章自体は、決して悪いところがあるわけではないのですが、取り立てて素晴らしいものかというとそこまででもない。ただ、読者の心に場面を映し出す技とでもいえばいいでしょうか、そういった点が大変すぐれていますね。

物語の設定が非常に具体的で、ある年の駅伝ドキュメンタリーを文章化したかのような、リアルさ溢れる文体は、驚きでした。本当に純粋に、爽やかに駆け抜ける青春物語に、読んでいるこちらまで気持ちがスッキリしてきますよ。



映画版Trailer

映画も以前から気になっていたのですが、観たことないので、チェックしたいところです。


** 著者紹介 **
三浦しをん
1976(昭和51)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒業。2000(平成12) 年、書下ろし長篇小説『格闘する者に〇』でデビュー。以後、『月魚』『白いへび眠る島』『秘密の花園』『ロマンス小説の七日間』などの小説を発表。『しを んのしおり』『夢のような幸福』『乙女なげやり』『悶絶スパイラル』『ビロウな話で恐縮です日記』や『あやつられ文楽鑑賞』など、エッセイ集も注目を集め る。2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。他に小説『私が語りはじめた彼は』『むかしのはなし』『風が強く吹いている』『きみはポラリス』 『仏果を得ず』『光』『神去なあなあ日常』『星間商事株式会社社史編纂室』『まほろ駅前番外地』などがある。
新潮社公式HPより

sing

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文学 | 23:19:58 | トラックバック(0) | コメント(0)
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