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ラ・フォル・ジュルネ
【マンガ】 『へうげもの』(1/2)
数寄か、それが問題だ。



へうげもの―TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE (1服) (モーニングKC (1487))  『へうげもの』

  山田芳弘著,講談社,2005年12月~
  現在『モーニング』にて連載中,単行本①~⑧服

  ★★★★★
















さて、しばらく続いております乱世特集第5弾です。
戦国時代に覇を鳴らした豊臣秀吉について前回ご紹介しましたが、今回は同時代人の目を通し、乱世に育った文化「わび」について紹介したいと思います。
(これまでの乱世特集はこちらから)


本書は、信長や秀吉に使えた戦国時代の大名・古田織部正が主人公。
立身出世を目指しながら、茶の湯と物欲といった数寄を追い求めていきます。
この本の特徴はですねー、もう一言で言えば
こんな味のあるマンガは滅多に無いです。


========


◎数寄の玉座に腰を下ろすは

主人公・古田織部正の転々と変わる表情は、彼の物欲への正直さ・素直さが表れていていいですね。見ていて全く飽きません。

古田織部1 古田織部4
    ダサい器をもらった織部             家康の饗応を受ける織部  
古田織部3

古田織部2
    ウケを狙って滑った織部             おいしさをかみしめる織部



そして古田織部正の最初の主君・織田信長
華を体現する信長は、作中にて華麗に振舞います。オシャレな具足の数々にも注目。

織田信長1 織田信長2

織田信長3織田信長4
      信長様の素晴らしき甲冑の数々と私生活。さすがにやりすぎでは…?


また、戦国時代ということで数多くの武将が登場しますが、これらが実に特徴的に描き分けられていて、彼らを見るのも楽しいです。
僕は個人的には、細川忠興の素敵な瞳と、しかし情緒的な性格が大好きです。

徳川家康
 細川忠興
    古田織部正にブチ切れる家康              真面目な顔も素敵な細川忠興

千利休1
           物語の核心を担う千利休

伊達政宗2伊達政宗1
                      奥羽の覇者・独眼流政宗

そして忘れてはならないのが茶器・名物群。
これら以外にも、本当に細やかなところまで描き込まれています。

茶器1 茶器2
   ”天下三肩衝”の一つ、「初花」               光秀の「八角釜」



◎常に数寄心を養って

巧みに描かれる登場人物たちだけでなく、本書の構成自体にもセンスが光ります
各人物に割り当てられた「好きな色」は、彼らの人柄をよく表しているでしょう。
各回のタイトルも、ROLLING STONESを初めとした有名な曲(洋楽が多い)のパロディになっていて、ニヤリとさせられます。

あとはヨン様とかサタデー・ナイト・フィーバーとか具志拳とか、現代の文化がさりげなく刷り込まれているのも楽しいですね。それなのに全然違和感が無いのは、作者の力量と言えるでしょう。
そうしたなかで、外国文化を含めた文化を、等身大で、しかしデフォルメしてわかりやすく伝えてくれます
この文化や登場人物の持つ思想の書き分けはさすがと言ったところ。


そして僕が好きなのは、モノの形容の仕方ですね。
この作者、相当の数寄者ですよ。

「この牙をむいた鬼のようなものは…、真に食べ物でござるか?」
              ――パイナップルを初めて見て
「まるで未来よりの使者が欠伸をしたような」
              ――ハートの図案を初めて見て
「ミグッ」とした素朴で力強い形
              ――出土した縄文土器を指して
「ヌパァ」と、いや「ヌシュパァ」か?
              ――秀吉の金の茶室を見て



◎生か死か、武か数寄か、それが問題だ!

主人公は悪どく機会を求め、あるいは機会をつくり、目的を追い求めます。
武人としての自分と、数寄人(趣味人)としての自分を天秤にかけながら。
そして主人公は様々な武将の持つ哲学に触れ、影響されていきます。

古田織部5
自作の茶杓と秀吉の茶杓をすりかえる古田織部正

荒木村重
  「だがあいにく、わしの方が業は上や」
松永秀久
  「圧倒的な力を持つ者が現れたとき、わしの道を選ぶかあきらめる道を選ぶか
織田信長
  「より多くの人間を動かすには、欲しがるものを与えるしかない
織田信長
  唐天竺にこの夜景を見たい」
ノ貫
  世の中万事移り変わるものよ。懲りすぎて重うなっては
    蝸牛のごとく身動きとれず格好悪い。物も生き様も軽うなければの」

千利休
  「茶の湯ではその偽らざる心こそ尊いのです」


主人公の感性が磨かれていく中で、わびさびとは何かを教えてくれます。
そして様々な文化のあり方とともに、文化を作り出すのは紛れも無い人間であり、意志であり、生き方であるということを示しています。

利休の「わび」と信長の「華」
秀吉の「真似」
荒木村重の「業」、高山右近の「意地」
ノ貫の「もてなし」
光秀の「正義」そして家康の「正義」



◎今日見た奴間違いない、本能寺に居た怪しい男

本能寺の新解釈も必見です。
秀吉の解釈は前回紹介した「秀吉入門」と比較してみてもいいですね。
そして千利休の黒幕ぶりがたまりません。さすが好きな色がブラックなだけあります。

千利休2
暗躍する千利休。目が、目が怖いよ…!

そんな本書から一言。

 ・人生には、選ばなければならないときがある。
 ・業を貫き通すべし。あるいはあきらめることもまた1つの道。
 ・好きなものは好き。そして「好き」もまた変わりゆく。



さて、乱世特集もやっと前半戦が終了です。
予想以上に長くなっちゃいました。他のジャンルの本も読みたいですねー。
次回ですが、本書の主人公・古田織部正を、司馬遼太郎の視点から読んでみたいと思います。
お楽しみあれ。


** 著者紹介 **
山田芳裕(やまだ よしひろ))1968~
個性豊かなキャラクターと、オリジナリティの高いストーリーで読ませる作家。『大正野郎』のレトロチックな描線やコマ割り、『デカスロン』の過剰なパースペクティブ、『へうげもの』のキャラクターの異常な表情など、作品ごとに個性的な切り口の工夫があり、この作家の特徴として受け入れられている。
デビュー作以来、人間の持つ独特のこだわりをテーマにした作品が多く、ユーモラスに、時には悲壮に、主人公のこだわりと世間一般の常識との乖離を描いて人気を得た。
他に『度胸星』『ジャイアント』など。
(Wikipediaより)



** 他にこの作品を紹介しているサイトさん **
「Lake Moraine ~Book Cafe」さん
「らんかみち」さん
「まんが栄養素」さん
「感想ですよ。」さん
へうげものOfficial blog


** これまでの乱世シリーズ **
1) 平安鎌倉 『定家明月記私抄』
2) 平安鎌倉 『義経』
3) 戦国大乱 『GOEMON』
4) 戦国大乱 『秀吉入門』
Otoya


テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

関連するタグ Otoya 【その他】 【マンガ】 【文化/芸術】 【乱世特集】 山田芳裕 ★★★★★
マンガ | 23:59:59 | トラックバック(0) | コメント(0)
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