■レビュージャンル
■テーマ別記事リンク
■管理人プロフィール

Otoya sing です.
地震の影響はありませんでした.
通常運営してまいります.

■最新記事
■カウンタ


当サイトではきれいなお姉さんを
全面的に支持します

■最新コメント
■最新トラックバック
■月別アーカイブ
■検索フォーム

■RSSリンクの表示
■QRコード

QR


ラ・フォル・ジュルネ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


関連するタグ
スポンサー広告 | --:--:--
【推理/ミステリ】『名探偵に薔薇を』
完全な毒薬の使い途は……




名探偵に薔薇を





『名探偵に薔薇を』
- a Rose for the Detective -



城平京
1998年7月
創元推理文庫
第八回鮎川哲也賞最終候補作

★★★★★

amazon


あらすじ
 ある日、警察・マスコミ各社に、不可解な童話「メルヘン小人地獄」」が届けられる。内容は、小人を材料とする完全な毒薬を作った悪い博士への報復に、ハンナ、ニコラス、フローラの3人が小人たちに殺される、というもの。

この毒薬の名は「小人地獄」。、無味無臭かつ、成分、製法、作用プロセスなど詳細は一切不明ながら、適切な致死量のみわかっていることから、完全犯罪を成立させることができる完璧な毒薬と言われる。

童話が送られてから数日後、1件の殺人事件が発生。その現場には、無数の小人の足跡、そして血で書かれた「ハンナはつるそう」の文字。
これらはすべて「メルヘン小人地獄」」の内容そっくりであった。

名探偵「瀬川みゆき」は事件解決に挑む、それが更なる事件を呼ぶことに繋がるのであった――


(以下、ネタバレあり)




2部構成の推理小説。面白いところが、1部・2部共に、完全な毒薬「小人地獄」が本来の使われ方をしていないこと。主要登場人物の誰一人として、「小人地獄」で誰かを毒殺しようとしていないのです。


第1部は「メルヘン小人地獄」。上記あらすじは、第1部のものです。
緻密で大胆な構成、交錯する心理がリアリティを高め、物語を盛り上げます。描写にややグロテスクな箇所がありますが、これは活字だけでここまでイメージを喚起させられる著者の表現力を称えるべき点でしょう。
颯爽と現れた名探偵が鋭い思考で事件に挑み、解決する、 というミステリーの醍醐味を真っ正面から楽しめる”王道”です。
童話「メルヘン小人地獄」は、著者の得意とする(?)シュールなものとなっています。著者のこういう、趣味を無理やり出すようなとこ、私は結構好きですね。他のところがしっかりしているからこそ出来るワザなのでしょう。



そして第2部「毒杯パズル」。これこそが本書のメイン。第1部は第2部のための序章にすぎません。
物語は、第1部から数年後。最も完璧な毒薬「小人地獄」が、最も愚かな方法で使われます。謎はいたってシンプル。「誰が、何のためにポットに毒薬を入れたのか?」

事件に挑み”真相”を見破った「名探偵」は、事件を自らの過去と重ね合わせ、苦悩する。さらに、新事実がわかるに従い、二転三転する”真相”に、加速度的に苦悩する「名探偵」。

言ってしまいますが、本編は、”謎解き”が本質ではありません。

「名探偵」は神の救いを信じていないが、心の底では過去の出来事からの救いを求めています。
ラストに待ち構える真の”真相”は、何ともやりきれず、深いため息が出るばかりでした。「名探偵」の声にならない叫びが胸に突き刺さります。
”孤独の中の神の祝福”を願わずにはいられなくなりました。


本作は、事件や推理の質もさることながら、こうした心理描写に非常に力を入れている作品です。ここまで探偵の心情を深く追ったミステリーは(「探偵小説」というらしいですが)、知りませんでした。
私は、読後数日間、タイトルを見ただけで胸にこみ上げるものがありました。


著者の魅力は、登場人物の感情の起伏、心理描写を複雑に絡み合わせて物語を構成している点、そしてそれを見事に描ききる表現力だと思います。
しかし、その根底にある最も重要視されるべきテーマが、”絶望””神の救い”

ミステリーを、ただの”謎解き”で終わらせずに、”絶望の運命””それに抗う人間”を描くことで、(結末がどうあれ)人間の持つ未来と可能性を追求する。それにより、深い感動を味わうことができます。

これは著者の他作品にも通じるもので、一人一人の人間の存在そのものに関わる問題を提起しています。
また、それこそが私が最も気に入っている点であります。


その反面、話がちょっと重くなりすぎる点もあるかも思います。
そこまでしなければ表現できない内容ではありますが、広く一般に受けるような作風ではないように思います。
そういう意味では、クラシック音楽に通じるものがあるかもしれません(実際『スパイラル』でクラシック音楽を元ネタにしたエピソードがあったりします)。


ストーリー自体は展開・会話のテンポ感が良く、とても読みやすいです。
私は『スパイラル』シリーズ、『ヴァンパイア十字界』から城平ワールドに入ったクチですが、これは期待していたものを遙かに超える傑作です。
すばらしいミステリーを堪能しました。



** 著者紹介 **
1974年6月15日、奈良県生まれ。大阪市立大学卒業。大学在学中にサークルで執筆を始め、ミステリーに目覚めてからは、月50冊ものミステリーを読み、分析した。SFやファンタジーにも造詣が深い。代表作『ヴァンパイア十字界』、『スパイラル~推理の絆~』、『スパイラル・アライヴ』他。


sing

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

関連するタグ sing 【小説】 【推理/ミステリ】 城平京 ★★★★★ 【文芸書】
推理/ミステリ | 22:03:31 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。