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【文学】 『嗤う伊右衛門』
晦との境界が破れ・・・内部の薄明が昏黒に洩れ・・・。
ならばそこから夜が染みて来る・・・。
(公式HPより)


『嗤う伊右衛門』
 『嗤う伊右衛門』
  京極夏彦

  第64回 泉鏡花文学賞

  平成11年 中央公論新社
  平成13年 角川文庫

  ★★★★★







今回は、『東海道四谷怪談』に端を発し様々な作品で描かれてきた“お岩さん”です。
稀代のミステリー作家、京極夏彦により斬新に蘇った怪談の傑作です。


あらすじ
民谷家の一人娘“岩”は、ある時、重い疱瘡を患う。
辛うじて一命を取り留めたものの、顔の左半分に大きな瘤が残った。
評判の美顔を失っても岩は気にしなかったが、周囲の岩に対する態度は一変。
身内は岩を腫物を触るように扱い、外では笑い者にされた。
岩の心情と民谷家存続を心配した父・又左衛門の計らいにより、
岩は無口・無欲・生真面目な浪人・境野伊右衛門を婿に迎える。
夫婦となった2人は、意志の疎通に悩みつつも、平穏な暮らしが続くように思われたが…



◇見えない謎と深まる地獄

始めから終わりまで、ストーリーはとにかく壮絶。
お茶のCMの雰囲気で読んではひどい目にあいます。

物語には、民谷又左衛門の上司であり伊右衛門の上司となる与力・伊東喜兵衛が登場します。
こいつが救いようのない悪党。
何か目的があって悪事を企むのではなく、ただ世の中全てが「気に入らない」から。
やり方は、期待させてから落としめる、本人ではなくその周囲の人を攻める、という陰湿なもの。
それでいて当事者以外には(時には当事者にも)親切に面倒を見てやっているように見えるから
タチが悪いことこの上ないです。

病にかかる前の岩に婚儀を申し入れ断られたことがある喜兵衛は、
岩が結婚したと聞くと「腹の奥からぶくりと泥が湧」きます。
その矛先は岩、そして伊右衛門に向かいます。
喜兵衛の奸計により、結局、進むも地獄、退くも地獄という絶望にはまっていきます。
しかも本人達は「ひどい状況だが自分のせいだから仕方ない」としか思わず、
「仕組まれた地獄」に気付いていない。
ストーリーの設定としては、私の知る限り一二を争う悲惨さです。


そして、そんなストーリーを通して描かれるテーマは「愛」
悪夢の中でも貫く、伊右衛門の愛、岩の愛はどちらにも理があり正しいもの。

しかし、すれ違います。
ある程度のすれ違いは必ず起こるものですが、
そこに喜兵衛の企みが(悪い方向に)うまく噛み合ってしまい、より増幅されていきます。
伊右衛門と岩、それぞれにすれ違いや間違いがあっても、それは互いを想う気持ちからきています。
なのに、どうしても悪夢から抜け出せない。
2人が哀れでなりません。
サブキャラクターの梅や直助、『巷説百物語』の主人公“小股潜り”の又市。
彼らも相当な絶望を抱えていますが、それらによって伊右衛門・岩のエピソードが際立っています。
こんな悲劇的状況は体験したことの無い私でも感情移入が激しく、言葉が出ません。



◇現代に蘇った怪談の傑作

本作はミステリーでもあります。
本来の『四谷怪談』は「貞女岩が夫伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐を果たす」(wikipdiaより)
というものですが、
著者は、岩にも伊右衛門にも新しい人物像を与えました。
孤独で不器用な妻と、妻を唯一理解する夫。
(このあたりのことは文庫版の解説に詳しいです)


また、たいていのミステリーは読み終えるとすっきりできますが、これはすっきりしない。
もちろん提示された謎は全て解明されます。
だが、それでメデタシかバッドエンドかがわからないのです。いや、どう見てもバッドエンドなのですが。

読者により捉え方が異なる作品かと思いますが、私は「救い」がキーワードかなと思っています。
私はストーリーの切なさに、読後数日間は気持ちが沈んだままでした。

それでも絶望だけで終わらせないところが著者の凄さ。
個人的に絶望っぽい暗い小説は好きですが、
やはりほんの僅かでも誰かにとっての救いがあればこそだと思います。
本作でも決して救われてはいませんし、他人から見ればどう考えても悲劇。
その中でも伊右衛門は、最後には「嗤っていた」
ここが本作の最も恐ろしいところだと思います。
惨憺たる怪談であり、ミステリーであり、悲劇・悲恋の物語。
彼らは救われたのか救われなかったのか、わからなくなります。


岩のひたむきさ、伊右衛門のケジメのつけ方には学ぶべきことが多いと思います。
信念や品格を大切にした日本人と愛を大胆に描いた名作です。


** 著者紹介 **
京極 夏彦 (きょうごく なつひこ)
1963年 、北海道小樽市出身。
桑沢デザイン研究所を経て、広告代理店等に勤務の後、制作プロダクションを設立。
アートディレクターとして、現在でもデザイン・装丁を手掛ける。
1994年『姑獲鳥の夏』でデビュー。代表作『魍魎の箱』、『巷説百物語』ほか多数。

大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき公式サイト大極宮より

** 他にこの作品を紹介しているサイトさん **
 ・「週刊現代」さん
 ・「書評暮らし」さん
 ・「読書NOTE」さん
 ・「族長の初夏」さん
 ・「機械」さん
 

sing

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文学 | 12:12:12 | トラックバック(0) | コメント(0)
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