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【時代小説】『人斬り以蔵』
織部正の陰謀は、すでに善十を竹内峠からよんだときから、周到にすすめられていたのであろう。
織部正は、自分の人生を自分の手で割り砕いた。
が、みごとに補綴した。
(第三編『割って、城を』より)



人斬り以蔵 (新潮文庫)
 『人斬り以蔵』
 司馬遼太郎著,新潮文庫,1969年12月

 ★★★★

 <目次>
 ・ 鬼謀の人
 ・ 人斬り以蔵
 ・ 割って、城を
 ・ おお、大砲
 ・ 言い触らし団右衛門
 ・ 大夫殿坂
 ・ 美濃浪人
 ・ 売ろう物語






「乱世」特集第6弾は司馬遼太郎の短編集『人斬り以蔵』
と言っても今回は『人斬り以蔵』ではなく、本書に掲載された別の2編をご紹介したいと思います。
(乱世特集はこちらからどうぞ)


========


◎『割って、城を』

時は江戸の幕開けのころ。
以前紹介した『へうげもの』の主人公・古田織部正が、74歳の大成した万石大名として登場します。
主人公は、関ヶ原で敗れて隠棲を続ける豪傑・善十。
物語は、彼が老いた織部正に召抱えられるところから始まります。

そのおおよそのあらすじとしては、古田家にやってきた善十の目から、乱世を生きた織部正の生涯と自分との対比、武と茶の違い、茶と政の関わり、そして茶の湯の行き着くところを客観的に描きだします。
蹉跌なき人生を歩んだ織部正の歪にみる美と、既に歪んでしまった鈴木惣内の憧れる完全、といった対比もおもしろいですね。そして、行き着くところまで行き着いてしまった織部正の茶碗割りを描くことで、茶の湯の魔性をも描きます。
善十の畏怖する織部正のどこか老獪な感じは司馬遼太郎ならでは。

そしてこれらの何気ないストーリーが、最後のわずか2,3ページに一気に収束し、事の真相を見事に彩らせているのです。これぞ短編!

これ以後をもって歴史は江戸時代に突入するわけですが、無謬の人生を歩んでいたにもかかわらず、最後の最後にあがいた織部正が何を考えていたのか。非常に興味深いところです。
またその最期は、かつての師である千利休にも深く通じるところがあるでしょう。



◎『おお、大砲』

同様に気に入った作品が『おお、大砲』。
あらすじは以下の通りです。

時は江戸の太平時代。主人公は和州植村藩2万石に仕える新次郎。
植村藩には、家康のころより伝わる威力攻城砲・ブリキトースがあった。
次男であった新次郎は医学を学び、また小太刀・金峯古流の印可を継いで、なんとか食い扶持を得てのんびりと生きるつもりでいた。
ところがある年、長州藩が京に攻め上る。そして新次郎には、隣家・笹塚家のマスオになって後を継ぎ、ブリキトースを用いて藩を防御せよとの主命が下るのだった。



前半の伸びやかな展開から、京の動乱により一気に物語りは幕末へと駆け下ります。
中盤、主人公には平山玄覚房というライバルが登場し、彼は維新革命の思想を説くのですが、それがどうにもピンとこない
平安な江戸時代に生きる主人公の目を通すと、革命思想というのがいかに滑稽で怪しげであるかがよくわかります。それが明治維新であってもね。
四民平等ってww みたいな。喩えるなら「消費税撤廃」に近い語感です。

その一方で、戦国時代から260年が経ち、おとぎ話と化した乱世の記憶は伝統の名の下に風化し、形骸化します。
大阪夏の陣以来埃をかぶり、神格さえ帯びるブリキトース。
この蘇生に苦慮する新次郎の様子を通し、司馬遼太郎は「硬直化した伝統」の見苦しさを伝えます。


それから明治になって、主人公は平山玄覚房と再会します。僕はこの再会が大好き。
平山は横浜でレンガ積みの仕事を請け負っていました。
金峯古流の印可や大和平野での大砲戦も笑い話になって、主人公は一言いいます。

「侍のころは、ばかばかしいことが多かったな」

司馬遼太郎は、この一言が描きたくてこの短編を書いたのかもしれません。



◎その他の作品

『人斬り以蔵』
革命に翻弄される以蔵の生涯を書いた短編です。非常に哀れ。
内容はほとんど変わらないけど、僕は『竜馬がゆく』で描かれる以蔵の方が好き。

『鬼謀の人』
村田蔵六(のちの大村益次郎)の物語。さらっと描いてあるので面白いです。
詳しく読みたい人は司馬遼太郎の『花神』を。

『大夫殿坂』
兄の死の真相を求めていく物語。その中で主人公は、京に暗躍する武装集団の存在を知ります。時代が動乱の幕末であるにもかかわらずそれに一切触れられないところが逆に好き。
歴史としての「幕末」は一大事件だったのかもしれないけれど、当時にしてみれば身内の死ほどには大事ではなかったのかも。
『おお、大砲』とともに、“庶民”の視点から見た乱世・革命は、意外にも「めんどくさい仕事もらっちゃったなあ」くらいの出来事でしかないんです。この笑い飛ばし方が本書の醍醐味。

あるいは僕たちも、気付かないだけで今革命の真っ只中にいるのかもしれません。
例えば以前紹介した『イノベーションのジレンマ』で述べられた、破壊的技術の台頭のように。


ということで本書を読んで一言。

 ・革命は気付かぬところで進行している
 ・当事者にとって革命は、得てして滑稽なものである
 ・革命が終われば伝統が生まれ、それを割り砕くことに次はある


さて次回は、時代を下って江戸の浮世に目を移します。
大乱が終わり眠るように見える太平の世で、人々が勝ち得た安らぎとはいかなるものだったのでしょうか。


** 著者紹介 **
司馬遼太郎(しば りょうたろう)1923~1996
産経新聞社在職中『梟の城』で直木賞を受賞。以後、俗に「司馬史観」と呼ばれる独自の歴史観に基づいて数多くの作品を執筆、歴史小説に新風を送る。歴史考証が極めて巧みで、歴史家でもどこからが史実でどこからがフィクションかわからないことがある。
戦国・幕末・明治を扱った作品が多く、代表作に『国盗り物語』『竜馬がゆく』『坂の上の雲』など。
また、『街道をゆく』をはじめとするエッセイなどで活発な文明批評を行った。
1993年文化功労賞、1996年従三位追賜。
(Wikipediaより)



** この本を紹介しているサイトさん **
「司馬遼太郎を読む」さん
「73へぇ文庫」さん
「地味な女子の読書とか映画とか。」さん
「ねぶがどねざる」さん
「ねこひげ日記」さん


** これまでの乱世シリーズ **
1) 平安鎌倉 『定家明月記私抄』
2) 平安鎌倉 『義経』
3) 戦国大乱 『GOEMON』
4) 戦国大乱 『秀吉入門』
5) 戦国大乱 『へうげもの』
Otoya


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時代小説 | 23:24:51 | トラックバック(0) | コメント(0)
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