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ラ・フォル・ジュルネ
【時代小説】 『十一番目の志士』
司馬遼太郎が贈る、新感覚RPG




十一番目の志士 (上) (文春文庫)
 『十一番目の志士』(上・下)
 司馬遼太郎著,文集文庫,1974年11月

 ★★★★















「乱世」特集9冊目です。
本書は、いよいよ苛烈さを増す幕末の動乱の中で、数奇な運命に流されるままに従う「人斬り」の物語です。
(これまでの乱世特集はこちらからどうぞ)


========


◎血飛沫とそして…

本書の主人公・天堂晋助は長州藩の下級武士。
鬼才・高杉晋作に天賦の剣才を見出され、以後数奇なる運命に流されるままに、人斬りとして幕末の動乱を駆け抜けていきます。

本書について特筆すべき点と言えば、主人公・天堂晋助に「思想がない」というところではないでしょうか。イデオロギーの渦巻く幕末なのに、それも司馬遼太郎の小説なのに…!

でもだからこそ他の幕末小説と違って、読者は天堂晋助がさもRPGの主人公であるかのように、その行く末を追うことができるのです。
「思想」を抜くことで個性が薄まり、完全な他人ではなくなるわけですね。
この点は『おやすみプンプン』なんかと比較してみてもおもしろいかも。

あとは決して主人公がしゃべらないドラクエシリーズなんかにも共通します。
僕は特にドラクエ3の主人公パーティを全部自分で作れるというシステムが大好きだったので、今回の「9」も超楽しみにしてますよ!(こないだ財布を無くしてまだ買えてない…)
世界に対する没入感という点ではドラクエはやはり偉大だと思います。


さて、天堂晋助は様々な人のコネをたどり、巡り合う強敵たちを倒し、転々と導かれるその先々で物語のカギを得て、僕たちとともに幕末の扉を開いていきます。
高杉晋作をはじめとして、香川の親分、桂小五郎、公家の貴族、江戸の岡っ引き、西郷隆盛、坂本竜馬、赤根武人、伊藤博文…

有名無名を織り交ぜながら、それぞれに頼り、促され、天堂晋助は日本各地を流されます。それを仇の娘や妹、土方歳三をはじめとする新撰組が追い、天堂晋助はその足跡に血飛沫のみを噴き上げていくのです。

おっと忘れてました、血飛沫だけではありません。
薄々気づいていたけど、司馬遼太郎さんエロすぎるよね
いくら小説でもヤりたい放題過ぎるのでは??



◎人を斬ることでしか世の中と関われないって人としてどうなの?

『竜馬がゆく』『人斬り以蔵』岡田以蔵『翔ぶが如く』中村半次郎と、幕末に暗躍した人斬りを描いてきた司馬遼太郎には、独自の「人斬り」像が出来上がっていたのでしょう。
それらはこの天堂晋助にある意味集約されている気もします。
思想無き天堂晋助からは、人斬りという欠落した人間像がただ際立ちます。
それは幕末という歴史的乱世にも関わらず、その情勢に無関心を通し、しかし人斬りという一事のみをもって関わるという、彼の社会的な痴呆性から来ているのかもしれません。


さて。

ここで断りを述べたいが、とにかく筆者は天堂晋助の前歴について多くを語りすぎた。が、晋助の物語は、右の前歴にはない。すべては元治元年夏、以後にある。が、ついついその前歴の奇妙さとおもしろさにつれられてここまできた。
(本書より、一部中略)


などと作中に書かれているので、読者はおろか、歴史家でさえも天堂晋助の実在を疑ってしまうようです。でも天堂晋助は司馬遼太郎の生み出した架空の人物。
しかし司馬遼太郎の圧倒的な時代考証が、天堂晋助という虚実の生き様を、幕末の混沌に強烈なリアリティをもって描き出します。

本書はいち長州人の視点から、幕末という複雑怪奇な時代の変遷を読者に教えてくれる良書です。


ということで本書を読んで一言。

 ・「出会い」は人生を狂わせ、また「出会い」が運命を導く
 ・たまには時の流れに身を任せるのもまた一興


次回はいよいよ乱世特集の最後です。
主人公は本書の天堂晋助も刀を交えたあのお方。幕末を最後まで戦い抜いた男の示す、乱世に見る美に迫ります。


** 著者紹介 **
司馬遼太郎(しば りょうたろう)1923~1996
産経新聞社在職中『梟の城』で直木賞を受賞。以後、俗に「司馬史観」と呼ばれる独自の歴史観に基づいて数多くの作品を執筆、歴史小説に新風を送る。歴史考証が極めて巧みで、歴史家でもどこからが史実でどこからがフィクションかわからないことがある。
戦国・幕末・明治を扱った作品が多く、代表作に『国盗り物語』『竜馬がゆく』『坂の上の雲』など。
また、『街道をゆく』をはじめとするエッセイなどで活発な文明批評を行った。
1993年文化功労賞、1996年従三位追賜。
(Wikipediaより)



** この本を紹介しているサイトさん **
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「さざまるの雑記」さん


** これまでの乱世シリーズ **
1) 平安鎌倉 『定家明月記私抄』
2) 平安鎌倉 『義経』
3) 戦国大乱 『GOEMON』
4) 戦国大乱 『秀吉入門』
5) 戦国大乱 『へうげもの』
6) 江戸治乱 『人斬り以蔵』
7) 江戸太平 『お江戸でござる』
8) 江戸太平 『漆の実のみのる国』
Otoya


テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

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時代小説 | 16:49:58 | トラックバック(0) | コメント(0)
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