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【ミステリ】 『ねじの回転』
193626日、午前4時21分。

処刑されたはずの安藤輝三は、第三連隊を率いて三宅坂を行く。
国連の協力を得て、2度目の鈴木貫太郎侍従長襲撃を完遂するのだ。
懐の”ピリオド”には、残された正規残存時間がデジタル表示されている。

”327:50:39”



ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)
 『ねじの回転』 (上・下)
 恩田陸著,集英社,2002年12月

 ★★★★















鈴木貫太郎
江戸時代の最後の年に生まれ、日露戦争では水雷戦にて”鬼カンタロー”の異名をとる活躍をし、2・26事件にて襲撃され頭部を撃たれるものの、蘇り、太平洋戦争末期には首相となって終戦を果たします。

物語は、主人公の1人である安藤輝三が2月26日に鈴木貫太郎を襲撃するところから始まります。しかしながらこれは初めての襲撃ではありませんでした。

すでに処刑されたはずの安藤は、21世紀の国連により蘇生され(というか時間を巻き戻され)、再度「史実を再現すること」を求められるのです。少しでも「史実」と異なる結果となれば、「不一致」として時間を巻き戻されやり直し。さらに、未来人に同じ任務を任された人間が他にも2人。
そして暗躍をはじめる「4人目」

選ばれた介入ポイント「昭和維新」を舞台に、恩田陸が描く本格SFミステリです。


========

* * は じ め に * *

歴史を改変してみたところ予想外の悪影響があったため、元に戻そうと奔走する21世紀の国連職員たち。
彼らは歴史の各ポイントに再介入して「史実」を再現・確定することで、歴史を元に戻そうとする。
そのポイントの1つとして選ばれたのが昭和維新「2・26事件」。
国連職員は3人の現地人に指示して歴史の再演を行わせ、史実との「不一致」があった場合には再度時間を巻き戻して、「正規時間」と呼ばれるタイムリミット内での史実の再現を試みる。

* * * * * * * *

!!以下ネタバレを含みます!!



◎昭和維新の全てがわかる

2・26事件って何だっけー? というアナタ。
5.15事件との違いもよくわかんないし、歴史の授業では割と地味な印象がありますよね。
しかし本書を読めば、事件のその場に居合わせたかのように知ることができるはずです。

2・26事件は、陸軍の青年将校が決起して当時の首相・岡田敬三や蔵相・高橋是清をはじめとする高官を襲撃したクーデター事件。
結局彼らは包囲され、維新は成らず、その多くが処刑されることになります。


恩田陸の素敵なところは、まず「再演者」に事件首謀者である安藤大尉栗原中尉を選んだところ。一度処刑されたはずの彼らは理想に燃えて、国連の指示に従いつつも、再度与えられたチャンスをなんとかモノにしようと企みます。

そして史実では共に生き延びるはずだった鈴木貫太郎、岡田敬三の死と、史実との「不一致」にもかかわらず確定される時間。そして未知の介入者の登場により混乱する国連職員を尻目に、3人目の再演者・石原莞爾の頭脳が旋廻します。
石原莞爾と言えば満州事変を画策し、「最終戦争論」により20世紀後半の核による牽制世界をみごと言い当てた、天才中の天才。
国連職員も何でよりによってこの人を選んだかな~と、ニヤリとさせられてしまいます。


安藤大尉、栗原中尉、石原莞爾と、2・26事件の中心人物を主人公に据えながら、ディテールを細かく再現しつつ、ゆっくりと歯車は狂っていきます。
事件が圧倒的なリアリティで描かれるからこそ、その歯車の狂う様子、つまり「歴史の改変」の恐怖が、「あるはずのものがない」怖ろしさが、読者を惹きつけて離しません。


こんなことってあるはずがない



◎やがて物語は歴史の軸を大きく外れ・・・

処刑される運命を知っていて、なお同じことを繰り返さなければならない苦痛。
史実通りに、首相の影武者を殺し本物を見逃すというミスを強要される葛藤。
『陸軍大臣告示』のわずかな一言にもこだわる最後に許された執念。

「再現者」たちが悩む中、現地に潜伏していた国連職員たちと現地人との接触が生じます。この未来世界のもたらす矛盾は予想外の災厄をもたらし、2・26事件は一気に歴史の軸を外れます。

そしていよいよ第三者が積極的に介入を始めるのですが、その「正体」は誰にも予想がつかないでしょう。しかしこの正体を知ることで、全編を通して謎だった第三者の意図が、絡まった糸を解くようにわかります。このあたりはミステリの醍醐味といったところ。
タイムトラベルもの、そしてSFとしてのガジェットを最大限に活かしています。

また、全編を通してところどころに挿入される小話も面白いです。
どれも全然関係なさそうな描写なのですが、これらはいくつかの歴史のIFを現しており、そして物語の重要なキーがちりばめられているのです。
これらもまた物語の収束につれて一点に集まっていきますが、恩田陸がこの小説を通して言いたかったことは、この挿入話にこそ表されているのではないかと思いました。



◎陰謀の正体

特に、アメリカの旗の下に働くトヨタ職員の挿話は、改めて描かれるとショックでした。
日本がアメリカの州であることを、疑うことなく暮らす21世紀の日本人たち。
歴史にはそんなIF、「あったかもしれない世界」もありえたのでしょうが、日本が独立を得た歴史を生きる僕の目からすれば、それは非常に気分の悪いものでした。

わずかな描写だけで読者にそれだけのものを伝えるのはさすが。
そしてそのようなIFを見せることで、2・26事件は過激に過ぎる思想だったながらも、彼らが純粋に夢見た理想の一端を、逆説的に読者に教えてくれているのかもしれません。


2・26事件
教科書ではわずかに紹介されるに過ぎないこの出来事も、激動の時代に生きた若者たちがどのような理想を胸に燃やし、そしていかに当時の日本が危うい状態にあったのかがわかります。

この事件はともすれば、あるいは明治維新のごとく、日本史の、そして世界史の一大転換点になっていたかもしれません。
いくつものパラレルワールドが並存すると仮定したとき、「史実」とは何なのか、歴史がいかに主観的に築かれているのかが、恩田陸の問いなのでしょう。



パラレルワールドについては、『タイムマシンの作り方』もご参照下さい。


** 著者紹介 **
恩田陸(おんだ りく)1964~
宮城県生まれ、早稲田大学卒。ホラー、SF、ミステリ、歴史など、既存のジャンル枠にとらわれない独自の作品世界で多くのファンを持つ。著書に『六番目の小夜子』『図書館の海』『ネジの回転』『常野物語』『ライオンハート』など多数。『夜のピクニック』は吉川英治文学新人賞と本屋大賞を受賞し、映画化もされた。



** 他にこの本を紹介しているサイトさん **
「ながし読み日誌」さん
「仙丈亭日乘」さん
「時間旅行~タイムトラベル」さん
「こんな夜だから本を読もう」さん
「ひなたぼっこは3時まで」さん
Otoya


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推理/ミステリ | 18:17:05 | トラックバック(2) | コメント(0)
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「ねじの回転」(上・下) 恩田陸
「ねじの回転」(上・下) 恩田陸 お薦め度:☆☆☆☆ 2006年3月4日讀了
2010-02-27 Sat 23:21:27 | 仙丈亭日乘
[review]恩田陸『ねじの回転』
 7日に恩田陸さんの『ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)』『ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫)』を読了。  近未来、人類は時間遡行の技術を手に入れ、国連は過去の「歴史の転換点」を再生・確定させる作業に着手していた。日本において選ばれた
2010-03-23 Tue 10:04:36 | こんな夜だから本を読もう

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